「燃費ならホンダが優位」を覆す、シボレーの進歩と超絶ドライビング (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 レースは終盤、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)がスピンしたことで出されたフルコースコーションにより、展開がガラリと変わった。最後のピットストップからは、新品のレッドタイヤ(ソフトコンパウンドでグリップ力が高い)を着けて抜きつ抜かれつのバトルとなるはずが、一転して、うまく燃費をセーブしないとゴールまで走り切れない戦いになった。

 その燃費走法でも、パワーは経験の豊富さ、実力の高さを見せた。ディクソンも燃費走法のうまさに定評があるが、そのディクソンに追われても危なげなく勝利へと走り切ったのだ。

「ディクソンにプッシュ・トゥ・パスを使わせないためには、自分に近づけさせないこと。ギャップを保つことに全力を注ぎ込んだ」と、パワーは勝利のポイントを語った。

 シフトアップのタイミングを早め、コーナーへの侵入はブレーキングを緩やかにしてスピードが急激に落ちないようにする。ラップタイムを大きく落とさずに燃費を抑える戦いは高いテクニックが要求される。パワーはそれを、「燃料をセーブしながらも、予選のようにプッシュして走った。ラップタイムをいいものに保つには、コーナリングを速くしてタイムを稼ぐしかないから、とても難しいんだ」と説明する。

 燃費といえば、長きにわたってホンダエンジンが有利と言われてきた。しかし、インディカーグランプリでは、パワーをはじめ、シボレー勢のV6ターボの燃費もライバルと互角か、むしろ優れているぐらいだった。

「ホンダの燃費がいいのはわかっている。自分の場合、最初にピットから届いた数字を実現するのは難しかった。そこでステアリングの燃料ミクスチャーを操作し、燃料を薄く設定し直した。パワーは下がるが、燃費の数字は達成できるようになった。その後は、目標とする数字を実現しながらラップタイムも十分速いものを出し続け、後方とのギャップを保った」(パワー)

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