【F1】ホンダの新人バンドーン初入賞も、気がかりな総帥の口出し (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 だが、その雰囲気は土曜午後のFP-3(フリー走行3回目)になって、一変してしまった。

「マシンのフィーリングが、昨日と全然違う」

 FP-2は路面温度が20度台にまで下がった夜の走行、そしてFP-3はまだ強い陽射しが照りつける昼間の走行なのだから、バトンがそう訴えるのは当たり前のこと。ところが、マクラーレンのエンジニアたちはここからセットアップ変更を巡って、右往左往を始めてしまったのだ。

「コンディションが違うから、マシンフィーリングが違うのは当たり前。予選・決勝は夜だから、FP-3のデータに引っ張られてはいけないということはわかっていたはずなのに、取っ散らかってしまった」

 あるエンジニアはそう語る。そしてどうやらその背景には、現地を訪れていた総帥ロン・デニスの存在が影響していたようだ。

 自身が陣頭指揮を執っていたころとは時代が違うのに、デニスは今でも現場に来ると、ピットガレージ内を歩き回ってはあちこちに口を出そうとする。実際、FP-2の間にもピットウォールにいたエリック・ブリエ(マクラーレン・レーシングディレクター)を無線トラブルについて問い詰めてみたり、セッション後にはアロンソを連れ立って土曜からの出場を認めるようスチュワード(競技会審査委員会)に詰め寄り、あっさりと却下されたりもしている。記者会見で出場許可を訴える持論をぶってみたり、チーム内でもドライバーや首脳陣など様々な者を捕まえては話し合いを試みるが、誰もが辟易(へきえき)とした表情を浮かべていた。

 しかし、チーム内で圧倒的な威厳と存在感を持つデニスの"鶴のひと声"には、誰も反論できない雰囲気が漂っている。それが、このチームの難点だ。

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