小林可夢偉の思い。
「F1にいたいんじゃない。レースがしたい」
小林可夢偉インタビュー@後編
日本最高峰のスーパーフォーミュラ(SF)に参戦した2015年の小林可夢偉は、未勝利に終わった。しかし、厳しい条件のなかで自分の腕を再確認してもいた。
一方で、可夢偉が国内レース復帰を決めた最大の理由は、「日本のモータースポーツを盛り上げ、社会的地位を向上させたい」という思いに駆られたからだった。それがレースを目指す後進たちのためになると......。SFでもがいた1年は、レースを盛り上げるための1年でもあった。
そんな可夢偉は2016年、どこに向かおうとしているのだろうか? SFへの思い、そしてF1に対する今の心境を聞いた。
小林可夢偉はF1に対してどんな思いを抱えているのか――バトルが少ないSFのなかで、可夢偉選手だけはあちこちでバトルをして、オーバーテイクを見せていたのが印象的でした。それは、レースを盛り上げようと意識的にやっていた?
小林可夢偉(以下:可夢偉) いや、それはないです。レースやからバトルがあって当たり前やと思うし、レースってみんなそれを観に来てるんやと思うし。第3戦の富士みたいにタイヤがズルズルで、「ちょっとカッコ悪いな」と思っても、一生懸命、頑張らなあかんなと思いますから。
――最終戦の鈴鹿のレース2でも、ブレーキを温めすぎて火が出たということで最後尾スタートにされながら、そこから雨のなかで怒濤の追い上げを見せました。
可夢偉 最初は腹が立って「もう帰ろうかな」と思ったくらいやし、やる気もなかったんですよ(苦笑)。でも、そんな状態で走ってたらアホらしくなってきて、後ろをついていくのも嫌になったんで抜きまくりました。なぜか知らないけど、ウチのクルマは雨は良かったんです。タイヤを付け替えて車高をウェット寄りに調整したくらいで、特に何もいじってないんですけどね。まぁ、そもそも僕の人生でウェットコンディションで遅いことはなかったんで、自信を持って走れました。
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