鈴木亜久里、プロストが参戦する「フォーミュラE」って何だ? (3ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi photo by AFLO

 シングルシーターの短距離(スプリント)レースは、基本的にどの選手とマシンが一番速いのかを争う競技だ。それが、ピットインするたびにマシンを交換するとなれば、正直、興ざめなレースになってしまうかもしれない。

 また、著名な元ドライバーを看板にしたチームのエントリーはあるものの、有力現役ドライバーの参戦発表はない。F1ドライバーの中にはEVレースに懐疑的な声を上げる選手も多く、日本人の現役トップドライバーの数人にも話を聞いたが、やはり、「今のところは興味がない」という返事が帰ってきた。フォーミュラEの未来像がある程度はっきりするまでは、第一線で活躍するドライバーたちが参戦を躊躇(ちゅうちょ)するのは仕方ないのかもしれない。

 さらに、世界のEV市場や技術をリードする日本・アメリカの自動車メーカー、サプライヤーの参戦がないのも気がかりな点だ。フォーミュラEには、「環境に優しいEVを普及させる」という啓蒙活動の側面もあるだけに、やはり当事者の自動車メーカーが契約するワークスドライバーを送りこみ、レースを戦いながらEVの技術を向上させるという、「走る実験室」にしていくのが理想だろう。しかし、次世代自動車の本命はEVではなく、水素を燃料とするFCV(燃料電池車)と考えている自動車メーカーもあり、日産とともにEVを積極的に推進するルノー以外に今のところ参入の動きはない。

 都市の中心部やリゾート地で、排気ガスゼロ&爆音もしない電動のレーシングカーで戦われるフォーミュラE選手権は、今後のレースのあり方を大きく変える可能性を秘めている。しかし同時に、既得権益を持ったヨーロッパのレース関係者による、単なるエキシビジョンマッチに終わってしまうかもしれない。夢のある新たなレースが始まる前に、あまり否定的なことは言いたくないが、その可能性は十分にある――。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る