【F1】有言実行。
可夢偉とチームが失敗から学んでつかんだ日本GP表彰台 (2ページ目)
「正直、Q3に行けるかどうかギリギリっていうくらいやと思ってました。それくらいヤバいピンチやったんです」
予選トップ3を想定していた可夢偉としては、トップ10前後というのは屈辱以外の何ものでもない。金曜のセッション後は、食事も喉を通らないほどの状態だった。
「あまりにクルマが遅いんで、いっぱい考えすぎて、頭が痛くなって、気持ち悪くなって、サラダしか食べられなかったんです。『頭痛いから寝る』って言って、夜のミーティングの前に起きてサラダをつまんだだけで......」
だが土曜の予選までにマシンセットアップの変更を施し、チームはその状況を打開してみせた。
「このチームにもこんな力があったんや、ってビックリしました(苦笑)」
可夢偉は完璧なアタックでそのチームの努力に応え、予選4番手のタイムを叩き出した。
そしてジェンソン・バトンのギアボックス交換による5グリッド降格ペナルティにより、可夢偉は3番グリッドからレースに臨むことになったのだ。
「レッドブルは信じられないくらい速いし、彼らと戦うのは難しいでしょうね。今のところ、レッドブルと戦いに行くつもりはないです。まったくないですね。問題は後ろから来るバトンですよ。でも、あとはもう、みんなと正面からぶつかっていくしかないから。行けるとこまで行くしかないでしょ」
決勝前のその言葉どおり、レースはバトンとの勝負になった。
スタートは好発進で前のウェバーを抜き、1コーナーまでに早々と2位へ浮上。直後の多重事故で、直接のライバルとなりそうな数台が姿を消した。
「スタートで2位に上がった時は、表彰台に行けると自信が持てたんですけど、まぁレースは何が起きるか分からへんし、あんまり変な期待は持たずにいこうと思って落ち着いて行きました。表彰台のことは考えてなくて、とりあえずこのポジションをどうやって維持しようかっていうことだけでしたね。目の前の1周1周に集中して。1ミスで簡単にポジションを失いますからね」
レース序盤はバトンを引き離すほどの勢いを見せた可夢偉だったが、タイヤの性能低下が早く、徐々にペースが落ちてきた。それを見たバトンが、先にタイヤ交換へと動く。新品タイヤを履いたバトンは、前方がクリアになったところで本来のハイペースで飛ばし始めた。それによって逆転を狙う、いわゆる"アンダーカット"と呼ばれる手法だ。
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