世界最強馬カランダガンのジャパンカップ制覇に見る日本競馬の地位向上~その舞台裏で施されたJRAの努力 (3ページ目)
そこで、海外事務所の駐在員たちは、現地の競馬場や厩舎、セリ会場などに直接足を運び、有力馬の馬主や調教師と頻繁に接触。日本の馬場の特性、国際厩舎の快適さ、輸送の安全性などを丁寧に説明し、相手側の不安をひとつずつ取り除くべく、日常的にコミュニケーションを図ってきた。
そうした交流のなかで、相手の条件もいろいろと受け入れてきた。帯同馬を認めたこともそのひとつ。先に触れたカランダガン、ゴリアット、オーギュストロダン、ロマンチックウォリアーらは、いずれも帯同馬を伴っての来日だった。
カランダガンについては、最初のコンタクトは2024年だったという。そこから地道なプレゼンを続け、昨秋のジャパンカップ出走へとつながった。
陣営の出走会見ではインセンティブに関する質問にも答えていたが、世界的な大馬主であるアガ・カーンスタッドからすれば、"ゼニカネ"だけの話ではなく、交渉に当たったJRA側の心意気などを通して、ジャパンカップというレースを評価し、出走を決断したことは間違いない。
こうしたJRAの海外スタッフによる取り組みは以前から行なわれていたが、より顕著に、積極的になったと感じたのは、コロナ禍の真っ只中だ。
コロナ禍初期に海外事務所へ赴任したある駐在員は、最初の半年は現地主催者の意向もあり、競馬場への立ち入りにも制限があって、赴任初年の秋頃には「調教師の誰とも知り合いになれていない」と肩を落としていた。
ところが1年もすると、その駐在員が赴任先の言語をほぼマスターし、すっかり現地の競馬サークルの輪のなかに溶け込んでいる姿を目にした。少しずつ制限が解かれると同時に、積極的な活動を開始。持ち前のコミュニケーション能力の高さによって、多くの関係者の信頼を勝ち取っていたのだ。
海外赴任の任期は、最大でも3年。そのため、当時海外で活動していた面々はすでに日本に戻って別の業務に就いている。だが、ヨーロッパにしろ、香港にしろ、アメリカ、オーストラリアにしろ、さらにこれまで話題にもならなかった南米からも日本へのプレゼンスが高まっている。それは直近の成果だけでなく、彼らが地道に撒いてきた種が芽吹いた証にほかならない。
現地時間1月20日に発表された2025年のワールドベストレースホースランキングでは、カランダガンが1位。ジャパンカップでカランダガンに次ぐ僅差の2着だったマスカレードボールが2位タイとなった。カランダガンの来日と勝利がなければ、この評価もなかっただろう。
「世界に通用する強い馬づくり」という目的は一見果たされているが、それは「世界が目標にする競馬づくり」にも言い換えられる。今年も日本の馬が世界中で活躍することと同時に、世界各国の強豪馬たちが日本に来てすばらしい走りを見せてくれることを期待したい。
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