凱旋門賞にまったく違うアプローチで挑む日本馬4頭。悲願の勝利に向け、各陣営が自信を覗かせる「戦略」とは (3ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 いわゆる"トライアルデー"ではなく、本番4週前のGIIドーヴィル大賞をステップに使うトリッキーな策に出たのは、矢作芳人調教師の管理するステイフーリッシュ(牡7歳)だ。これまでも前例にとらわれない形で結果を出してきた矢作調教師は、「本番までの間隔が短いので、トライアルデーを使うのは避けたかった。けれども、こちらの競馬を一度経験させておきたかったので」とその狙いを話す。

 前出の2名の調教師も、前哨戦の消耗が戻り切らなかったことを強調していたことを考えれば、ひと叩きを前倒しするのは理にかなっている。ドーヴィル大賞は、ドウデュースのニエル賞と同様にひと叩きと割り切ったものだった。

「6分のデキで2着という結果は、素直に『こんなもんかな』と思いました」

 父ステイゴールドは、7歳時の引退戦となった香港ヴァーズで待望の国際GⅠを初勝利。その産駒たちもオルフェーヴル、ナカヤマフェスタと凱旋門賞で好走している。

「7歳になれば普通は大きな変化がないはずなのに、トレセンのワサワサした雰囲気から解放されたこともあってか、成長を感じています。正直、日本の4頭の中では(格が)落ちるけども、意外性に賭けたいよね」(矢作調教師)

 現地の馬場を一切経験せず、ぶっつけで本番を迎えるのが"大将格"であるタイトルホルダー(牡4歳)だ。

「精神的にもフィジカル的にもこの馬についてつかめてきた中で、短い間隔で使うのはよくない。休み明けでも走れる馬なので、ベースの調教をしっかりやれば大丈夫だと判断しました」

 臨戦過程の理由を管理する栗田徹調教師はそう話す。実際に、3歳時のGIIディープインパクト記念弥生賞や、今年のGII日経賞、そしてGI宝塚記念と、間隔を開けた出走で勝利している。とりわけ今年の宝塚記念は約2カ月ぶりでも圧巻の走りだった。

「先週しっかりできているし、最終追い切りでは体調も落ち着きもよく、いい調子できています。無理だけはしないように、当該週の追い切りとしては文句のない内容です」(栗田調教師)

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