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「無敗」が脚光を浴びた2020年。「無勝」のハルウララに会いたくなった (4ページ目)

  • 新山藍朗●取材・文 text&photo by Niiyama Airo

 ハルウララが人気者になった2000年代初頭は、世の中ではリストラの嵐があちらこちらで吹きまくっていった。そこで、負けても、負けてもリストラされないハルウララの馬券は「リストラ封じ」だとして、もてはやされた。

ハルウララの缶バッチが購入できるガチャガチャハルウララの缶バッチが購入できるガチャガチャ 同様に、「当たらない」からと、交通安全のお守りにもされた。

 コロナ禍の今、もしハルウララの馬券があれば、新型コロナウイルスに"当たらない"からと、妖怪「アマビエ」と同じくらいには人気になったかもしれない。

 競馬関係者の多くが、なぜあの馬があれほどの人気者になったのかと、いまだに首を捻る。まさしく"不思議の馬"ハルウララ。

 走っても、走っても勝てなかった。ただ、勝てなくても、また、次もその次も一生懸命走った。そこに、あの猛烈なリストラの時代、少なからぬ共感を覚えた人たちがいたのではないか。

 勝たなくていい、元気でさえいれば――。

 彼らは、ハルウララに言うとも、また自らに言うともなく、そんなエールを送っていたような気がする。

 宮原さんによれば、いまだにハルウララには熱心なファンからの贈り物が届くという。先日は「ハルウララに食べてほしい」と言って、60kgものニンジンが牧場に届けられたそうだ。

「もう少し、おしとやかに過ごしてほしい。そうすれば、もっと長生きできる」と宮原さん。おそらく、ここがハルウララの終の棲家になるのだろう。

「無勝」の馬でも"無敗"の存在に劣らぬ、幸福な余生があると思った。

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