有馬記念で思い出す「世紀の一発屋」。忘れられない遅咲きの名馬たち (4ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 だが、GIでは力が及ばなかった。メンバー最速の上がりをマークしても掲示板に載るのが精いっぱい。GIでの最高位は6歳秋に挑んだ天皇賞・秋の3着だった。7歳秋から8歳春にかけては、出走したGIで4戦連続4着という、何とも評価が難しいというか、つくづく残念な戦績を残している。

 後方一気の戦法を変えたり、騎手を替えたりしても、4着止まり。結果、「ヨンパニー」といった、あまりありがたくないあだ名までつけられた。

 3歳秋の菊花賞から8歳春の宝塚記念まで、GIは12戦して未勝利。連に絡んだことも一度もない。8歳という年齢を迎えて、さすがにオーナーや関係者も「GI勝ちはもう無理か......」と諦めていた。

 ところが、そうした状況を迎えて、逆にカンパニーの調子はグングンと上がっていった。

 8歳の秋初戦、GII毎日王冠で女傑ウオッカを一蹴。それが、快進撃の始まりだったが、ファンの評価は変わらず、「GIIだからね」「前哨戦だしね」と片付けられ、続く天皇賞・秋でも5番人気と伏兵扱いだった。

 しかし、そうした評価をあざ笑うかのように、天皇賞・秋でも自慢の末脚が炸裂。最後の直線で、馬群のど真ん中から気持ちよく伸びて、後続に1馬身4分の3差をつける完勝劇を披露した。

 カンパニーはその勢いで、続くGIマイルCSも制覇。その勝利を最後に、現役を引退した。

 8歳秋で"旬"を迎えたカンパニー。空前絶後の見事な"遅咲き"ぶりであった。

 競走馬は、やはり無事是名馬――。

 遅咲きの彼らには、彼らなりの成功の理由があるとしても、共通して言えることは、どの馬もそこまで丈夫で、元気だったということ。そうでなければ、GI馬になるチャンスすら、手に入れることができなかった。

 今年は、牡牝で三冠馬が誕生。その活躍が大きな話題となったが、ふと、そうした快挙とは無縁の"遅咲き"の馬たちへの思いが募った。

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