凱旋門賞で日本のディアドラに騎乗する
名ジョッキーの男気に感謝

  • 土屋真光●文・撮影 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

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 日本でも秋のGⅠシーズンが開幕するが、フランスでは世界最高峰のレースであるGⅠ凱旋門賞(フランス・パリロンシャン/芝2400m)が行なわれる。フランスは新型コロナウイルスの影響でシーズン開幕が遅れ、重賞スケジュールなども大きな変更があったなか、凱旋門賞がスケジュールどおりに開催されることは競馬ファンも嬉しいだろう。

 昨年の春から海外遠征中のディアドラ(牝6歳)が出走することもあり、日本でも馬券が発売される。イギリスのニューマーケットに滞在中のディアドラは、日本馬初の勝利に向け、9月30日に調教場アルバハスリ・ポリトラックコースで最終の追い切りを実施した。

凱旋門賞に向けて調整を行なうディアドラ凱旋門賞に向けて調整を行なうディアドラ 騎乗した"新コンビ"のジェイミー・スペンサー騎手は、「自分がやるべきことをよく理解している馬。少し促しただけですぐに反応してくれて、いい伸びをしてくれました」と振り返った。過去に2度、英国リーディングジョッキーに輝いた名手を唸らせるほどの充実ぶりを見せている。

 ディアドラは7月30日、イギリスのグッドウッド競馬場で行なわれたナッソーS以来の出走だが、凱旋門賞を迎えるまでには陣営の並々ならぬ努力があった。

 先を見据えていたこともあって、同レースは仕上がりもピークではなかったとはいえ、道中の手応えに反し、勝負どころで早々に諦めてしまうような走りで7頭立ての最下位。前年の覇者として屈辱の結果になった。

 レース後の様子を見てもアクシデントが起こったようには見えず、一から立て直すほかに、6歳という年齢から引退という選択肢も陣営の頭をよぎった。しかし、「ディアドラの名誉を回復しよう」という橋田満調教師の言葉を受け、チームはディアドラと向き合うことを選んだ。

 すると、胃潰瘍や体の構造のズレといった問題が見つかった。普段なら「競走馬ならよくあること」で済ましてしまいそうなところだが、しっかりと対応した。メンタル面についても、ひと月ほど外部でリフレッシュし、滞在先の厩舎に戻ってきてからも条件馬を借りて、マンネリを感じていたディアドラの走る心にも刺激を与えた。

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