2019.08.14

異次元の強さだったキングカメハメハ。
安藤勝己「誰が乗っても勝てた」

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

「あの馬は、強かったね。負かしてやろうと挑んだけど、跳ね返されてしまった」

 何年か前、2004年のGI日本ダービー(東京・芝2400m)を振り返って、蛯名正義騎手はそう漏らした。

 蛯名騎手は、このダービーで最大の”ダークホース”と見られていたハイアーゲームに騎乗していた。そして、その蛯名騎手に「強かった」と唸らせたのが、このときのダービーを圧勝したキングカメハメハだ――。

2004年の日本ダービーを制したキングカメハメハ かねてからの免疫機能の低下により、種牡馬を引退していたキングカメハメハが8月9日、体調の急変によって死亡した。18歳だった。

 GI NHKマイルC(東京・芝1600m)とダービーの、いわゆる”変則二冠”を初めて達成した馬だ。マイラーのスピードと、中長距離戦に勝つためのタフさを併せ持った稀有な馬だった。

 3歳秋に屈腱炎により引退したため、GI勝ちはこの2つのみ。他の「名馬」と言われる馬に比べると、その数字は寂しく映るかもしれないが、戦績自体は8戦7勝と輝かしい。それに何より、記録より記憶に残る馬だった。キングカメハメハが残した印象は、並みの名馬などには及ばないほど鮮烈だった。

 とりわけ記憶に残るのが、2004年のダービー。その前の、NHKマイルCでの5馬身差圧勝も強烈だったが、ダービーで見せた強さは、ただの”強さ”ではなかった。

 本当に強い馬とは、「こうやって勝つものだ」という”凄み”のようなものを見せてくれた。冒頭の蛯名騎手の「強かったね」というコメントにも、そのことがよく表われている。

 そのダービー。

 断然の1番人気を背負ったキングカメハメハは、4コーナー入口付近で早くも先頭をうかがう。府中の直線は長い。4角先頭は、いわば禁じ手と言うに近い。

 だが、馬の能力に絶対的な自信を持つ主戦の安藤勝己騎手は、果敢にその戦法を取った。