異次元の強さだったキングカメハメハ。安藤勝己「誰が乗っても勝てた」 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 そして、キングカメハメハをぴったりマークしていた3番人気のハイアーゲームも、それに付いていった。

 ハイアーゲームも、前走では強敵ぞろいの青葉賞(東京・芝2400m)をレコードタイムで完勝。「ダービーで青葉賞馬は勝てない」とジンクスがあったものの、当時猛威を振るっていたサンデーサイレンス産駒ということもあって、「この馬なら」という期待を集めていた。

 直線で先頭に立とうとするキングカメハメハ。それを外から競り潰しにかかるハイアーゲーム。

 ハイアーゲームの手綱を取る蛯名騎手は、確かにキングカメハメハを「負かしにいった」のだ。この捨て身のチャレンジが、のちにこのレースを「名勝負」と呼ばせることになる。

 しかし、ハイアーゲームがわずかに前に出たかに見えたその直後、そこから勝負は一気につく。

 蛯名騎手の手が激しく動くも、その叱咤にハイアーゲームが応えられない。一方、キングカメハメハの手応えは、ハイアーゲームから見れば無慈悲なほどに確かだった。

 2頭の差はみるみると開いていく。ゴール前でさらに手応えが怪しくなっていったハイアーゲームは、結局後ろから脚を伸ばしてきたハーツクライにも差されて3着に沈んだ。

 終わってみれば、無謀とも思えるレースをしながら、キングカメハメハが従来の記録を2秒も縮めるレコードタイムで勝利を飾った。

 4角先頭の競馬で、しかも競りかけるライバルを捻り潰した。そのうえ、レコードタイムでの快勝劇。まさに破格の強さだった。

 のちに、主戦の安藤騎手は、キングカメハメハのダービー制覇について「どう乗っても勝てた」と語り、さらに「誰が乗っても勝てた」とまで言った。

 それほど、キングカメハメハの強さは次元が違ったということだろう。 

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