【競馬】神戸新聞杯、「新興勢力」に大駆けの気配あり
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
およそ1カ月後に開催される牡馬クラシック最後の一冠、菊花賞(10月26日/京都・芝3000m)。9月21日にはその前哨戦のひとつ、セントライト記念(新潟・芝2200m)が行なわれ、今春の皐月賞馬で、ダービー2着のイスラボニータ(牡3歳)が貫禄勝ちを収めました。以下、弥生賞馬で、皐月賞2着のトゥザワールド(牡3歳)が2着、ダービー4着のタガノグランパ(牡3歳)が3着と、新興勢力の台頭はなく、春の勢力図どおりの決着となりました。
9月28日にはもうひとつのトライアル、神戸新聞杯(阪神・芝2400m)が開催されます。ここには、3歳世代の頂点に立ったダービー馬、ワンアンドオンリー(牡3歳)が登場。セントライト記念同様に春の実力馬が勝つのか、はたまた夏の上り馬が頭角を現すのか、注目です。
まず見逃せないのは、ワンアンドオンリー。前走のダービーでは、イスラボニータを徹底マークし、ゴール前できっちり差し切りました。正直、レースの内容的にはイスラボニータのほうが強い競馬をしたと思いますが、ワンアンドオンリーもスタートから仕掛けて好位をキープ。後方一気のそれまでとは違う競馬をしながらも、終(しま)いの脚は最後まで伸びていました。ダービー馬と呼ぶにふさわしい走りを見せたと思います。
そのダービーから、今回は夏を挟んでの休み明け。どれだけ成長した姿を見せてくれるのか、とても楽しみです。
ただ一方で、実は心配な点もあります。ダービーのときのように、スタートしてからの行き脚がつくかどうか、です。なにしろ、それまでの競馬では、仕掛けても反応が鈍く、前に行きたくても行けないことが多かったからです。休み明けの今回、その可能性がありそうです。それでもし、好位につけられなかった場合、後方一気の競馬で差し切ることができるのか、やや気がかりです。
このワンアンドオンリーに迫る存在としては、ある意味「新興勢力」と言える、サトノアラジン(牡3歳)が気になります。
そもそもサトノアラジンは、2歳時にはワンアンドオンリーよりも評価の高い馬でした。実際、ラジオNIKKEI杯2歳S(2013年12月21日/阪神・芝2000m)では、1番人気に推されていました。結果的には、スムーズな競馬ができずに3着と敗れましたが、勝ったワンアンドオンリーと勝負づけがついたような内容ではありませんでした。しかしその後、年明け初戦の共同通信杯(2月24日/東京・芝1800m)でも3着、500万下の自己条件のレース(3月15日/阪神・芝2400m)でも2着と、勝ち切れないイメージがついてしまいました。
これには、理由があると思います。
おそらく陣営としては、共同通信杯を勝つか、最低でも2着を確保して賞金を加算し、皐月賞トライアルに進む青写真を描いていたと思います。だからこそ、レース前の追い切りもびっしり行なって、ここが勝負という仕上げをしていました。ところが、共同通信杯の開催日(2月16日)に大雪が降って、レースは翌週に順延されてしまったのです。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。