【競馬】神戸新聞杯、「新興勢力」に大駆けの気配あり (2ページ目)
輸送を2度行なう負担は避けられましたが、目標としていたレースが1週でもスライドすれば、さすがに影響は出ます。レースに向けて、万全の態勢を整えていればなおさらです。事実、サトノアラジンは1週延びたレースで、ストレスを溜めたような感じで、煮え切らない走りを見せていました。結果、ここでリズムを崩してしまったことが響いて、続く自己条件でも敗れてしまったのではないでしょうか。
その後、陣営は思い切ってサトノアラジンを休養させました。これは、英断です。通常、これほどの評判馬であれば、何とかクラシック、せめてダービーには出走させようと、無理して使ってしまいがち。その場合、得てしていい結果は出ないものです。
翻(ひるがえ)って、春のクラシックシーズンの間、十分に英気を養ったサトノアラジンは、休み明けで素晴らしいレースを披露。以前のような勝負弱い一面が払拭されて、圧倒的な強さで500万下、1000万下の条件戦を連勝してきました。
特に前走の九州スポーツ杯(8月9日/小倉・芝2000m)では、重賞2着の経験があり、準オープン(1600万下)勝ちもあるバッドボーイ(牡4歳)や、1000万下の条件戦を勝っている降級馬のカナロア(牡5歳)などを子ども扱い。実質準オープンかオープンと言える強力メンバー相手に快勝した実力は、本物と言えるでしょう。実績ではワンアンドオンリーに水をあけられてしまいましたが、今回は好勝負を演じてもおかしくありません。
クラシック期間中に休養をとったことで、たくましく成長したヴォルシェーヴ。 まともならば、上記2頭が抜けているように感じますが、2頭とは未対戦のヴォルシェーブ(牡3歳)を、今回の「ヒモ穴馬」として取り上げたいと思います。
同馬は新馬戦を快勝後、2戦目の黄菊賞(5着。2013年11月9日/京都・芝1800m)では、トゥザワールドに敗戦。3戦目のエリカ賞(2着。2013年12月7日/阪神・芝2000m)でも快速馬バンドワゴン(牡3歳)に完敗しました。年明けの京成杯(1月19日/中山・芝2000m)でも6着と、一線級相手には歯が立たない印象がありました。
しかしそのあと、自己条件(500万下)のセントポーリア賞(2月23日/東京・芝2000m)を勝って休養すると、復帰戦となる1000万下の芦ノ湖特別(6月22日/東京・芝2400m)を快勝。ひと皮むけたレース内容を見せてくれました。休養期間をとったことが、この馬を大きく成長させたのだと思います。
先述のサトノアラジン同様、皐月賞、ダービーという春のクラシックを早々に諦めて、成長を促したことが功を奏しましたね。これも、陣営の英断だと思います。夏を越してさらにパワーアップしていれば、今度は一線級相手でもヒケをとらないと思います。本当に楽しみな存在です。
著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。
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