【競馬】小牧場を劇的に変えたダービー制覇の余波
『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第39回
2012年の日本ダービーを制し、同世代のサラブレッドの頂点に立ったディープブリランテ。同馬を生産したパカパカファームのスタッフたちも、その現場で歓喜の瞬間に酔いしれた。しかし、ダービーを勝った喜びを本当の意味で実感することになったのは、北海道の牧場に戻ってからだった――。
事務所に飾られているディープブリランテのダービー優勝トロフィー。 ディープブリランテが激戦を制した2012年の日本ダービー(5月27日/東京・芝2400m)。同馬を生産したパカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏は、勝利の余韻にどっぷり浸ることなく、レース当日の夜、北海道に戻った。
「ダービーの夜は、そんなにお酒を飲んでいませんよ(笑)。ほとんどのスタッフは牧場で留守番をしていましたから。応援に来たスタッフたちだけで勝手に東京で飲んで、のんびりしているわけにはいきません。その日のうちに北海道に戻って、私も翌朝はいつもどおり牧場に行きましたよ。そこで、スタッフたちとダービーの話をして盛り上がりました」
ダービーの翌日、改めてスタッフとともに喜びを分かち合ったとはいえ、一日の始まりは極めていつもどおりだった。しかし、スタッフらと笑顔で挨拶をかわしたあと、スウィーニィ氏は自分なりの、ダービー勝利の小さな祝福を思いついたという。
「いつもは朝食にオートミールを食べるのですが、ダービーを勝った翌日にオートミールを食べるのは少し寂しい気がしました。それで、近くのショッピングセンターに行って、クロワッサンを買うことにしたんです。ちょっとしたお祝いです(笑)」
1 / 3