【競馬】名伯楽が「運命」をかけたワンアンドオンリー (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●写真 photo by Murata Toshiyuki

 橋口調教師だけでなく、ノースヒルズにとっても、ワンアンドオンリーはゆかりある血統だ。同馬の近親には、2002年の皐月賞を制したノーリーズンや、重賞2勝のグレイトジャーニーなど、ノースヒルズの繁栄を築いた活躍馬の名がある。齋藤氏は、それらノーリーズンやグレイトジャーニーの姉で、ワンアンドオンリーの祖母サンタムールも手掛けており、「馬の顔を見ただけで、この一族だとわかる」という。まさにノースヒルズ生え抜きの血脈なのである。

 昨年のダービー馬キズナも、ノースヒルズの所有馬であり、生え抜きの血脈から輩出された一頭。ワンアンドオンリーは、その偉大な先輩に続いて、競馬界最高峰の舞台での飛躍が期待されている。

 デビュー時には精神的に幼く、成績も振るわなかった(新馬戦は12着)ワンアンドオンリー。だが、昨年の冬から落ち着きを携え、馬体も成長した。牧場時代とは、ひと回りもふた回りも見違える馬となった。それを肌で感じている齋藤氏がタービーへの思いを改めて口にする。

「父の成長力はもちろん、何よりこの一族の底力に期待したいと思います。母の父がタイキシャトル(現役時代は1600m以下の短距離GIを5勝)ということで、2400mという距離について不安視する声もあるようですが、私たちはまったく気にしていません。ワンアンドオンリーの走りを見れば、距離は問題ないでしょう。それよりも、この一族が持つ底力は、東京の2400mでこそ発揮されると信じています」

 かつて橋口調教師が管理し、ダービーの夢を追いかけた父ハーツクライ。ノースヒルズの歴史に欠かすことのできない血脈を持つ母ヴァーチュ(前述サンタムールの娘)。その2頭から生まれたワンアンドオンリーは、ホースマンたちのさらに大きな夢を叶えることができるのか。決戦の火ぶたはまもなく切って落とされる。

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