【追悼】ジャンボ尾崎は言った「自分の持っている1%だけにはプライドと信念をもって歩んでいくことが大事なんだよ」 (2ページ目)
【絶頂期にいちばんうれしかった賞とは】
その話を聞いて、この人は優勝をする度に幸福感が希薄になるのではないかと思い「やはり辛い道を歩いているように思えますが」と再び言うと、今度は諭すような調子で答えた。
「いや、そんなことはない。それは違う。自分という存在を作れたことには常に感謝している。だからそれに逆らわないように生きること。それは辛さじゃないんだよ」
そして、こんなエピソードを滔々と話すのだった。
「俺はね、あんまり感激したりすることがない。割合と冷めている人間だからさ。ただ、去年(1996年)いろいろな賞をもらったなかでひとつだけ、本当にうれしいなと感じた賞があったんだ。それは、ある市の人たちが選ぶ賞で、その賞の名前が『今年一番幸せであった人』。男ひとり、女ひとり、スポーツから芸能、いろんな人のなかから選ばれる。それに俺が選ばれたんだ。
恵まれない人はたくさんいるわけだしね、世の中には。そういう人たちが、ジャンボ尾崎みたいになりたい、ああいう幸せな人になりたいっていうね。もちろん、ひがみがあったり妬みがあったり中傷があったりするのが世の中だけど、俺が幸せだって思っている人たちもいるんだよ。だから、自分を磨いていくことは必要なんだ」
ここでもまた、恵まれない人や普通の人に思いを寄せ、そういう人たちから幸せな人生を歩んでいると思われているのだから、自分には辛さなどないし、今後も研鑽を深めていこうと言ったのだ。
日本ゴルフ史上最強のプロゴルファーであり強面で通っていた『ジャンボ尾崎』という人間が多くの人からの支持を得たのは、その強さだけではなく、人に寄り添う人情のようなものをファンが感じ取っていたからだろう。プロ通算100勝を挙げた96年に数々の表彰を受けたなかで、このつつましい『今年一番幸せであった人』という賞に対して、感激をすることがないという人が「本当にうれしい賞だった」と言ったのだ。
人から見られているとか注目されているというのは、煩わしくないですかと訊くとその返答はこうだった。
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