「飛ばない」山下美夢有が、ロングヒッターが猛威を振るう女子ツアーで強いわけ (3ページ目)

  • 古屋雅章●取材・文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

"前から打つ"か、"真ん中から打つ"か――パーオン率を巡る争いは今後も熾烈を極めそうだが、"パーオン"には次打のバーディーパットを決めてこそ実を結ぶ、という意義があると考えれば、フェアウェーの"真ん中から打つ"山下のマネジメントに分がある、という見方ができる。

 というのも、バーディー数というスタッツを見れば、山下が238個(17試合)で1位。片や、岩井明愛は230個(18試合)で2位だからである。

「グリーン上で狙ったところに球を止めるには、スピンコントロールが大事、ということは以前から言われていることですが、最近の女子ツアーでは『グリーンを固くする』傾向があることから、それに加えて、弾道の落下角度(ランディングアングル)の重要性も増してきています。

 グリーン上で球を止められる落下角度の目安としては、40度は必要とされていますが、山下さんはトラックマンの弾道分析によってクラブごとの落下角度も、そしてスピン量も算出できているはずです。

 そのうえで、彼女はピンにより絡む、数値に裏づけされた攻略ルートがわかっていて、そのショットを打てる技術がある。それが、ドライバーの飛距離を少し抑えてでもフェアウェーに打つ、という選択になっていると思います」(森口プロ)

 フェアウェーキープ率は、山下が78.6346%で2位。一方の岩井明愛は61.8205%で62位。パーオン率はほぼ同じながら、この差が"前から打つ"岩井明愛より、"真ん中から打つ"山下のほうがピンに絡むショットの精度を高め、バーディー数の違いにつながっているのだろう。森口プロが言う。

「山下さんの強さは、データと技術に裏打ちされたコースマネジメント力と、それをやりきる精神力にあると思います」

森口祐子(もりぐち・ゆうこ)
1955年4月13日生まれ。富山県出身。女子プロゴルファー。現在は解説者としても活躍している。ツアー通算41勝。JLPGA永久シード保持者

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