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【ワールドカップ】逃げきりを狙って逆転負けを喫したイングランドは、まるでブラジルに敗れた日本代表のようだった (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Masaki Asada

 命拾いしたイングランドだったが、直後にセカンドボールを拾ったリオネル・メッシがドリブルでの仕掛けから右足でクロスを上げると、これをラウタロ・マルティネスが頭で合わせ、決勝ゴールを決められてしまう。

 イングランドの目論見が、まさに吹き飛んだ瞬間である。

 前半のイングランドは、いや、1点を先制するまでのイングランドは、勇気ある戦いでディフェンディングチャンピオンに挑んでいた。

 イングランドにとってアルゼンチンと言えば、1986年メキシコ大会でのディエゴ・マラドーナの"神の手ゴール"によって勝利を盗まれた因縁の相手。加えて、両国の間にはフォークランド紛争という歴史的対立もあり、嫌でもライバル意識が燃え上がる対戦相手である。

 実際、前半は球際の争いが激しく、両チームともにファウルが目立った。ちょっとしたプレーひとつで頻繁に小競り合いが起き、試合は序盤からヒートアップ。それでも、イングランドは一歩も引かず、挑発目的でケンカをふっかけてくるかのようなアルゼンチンに堂々と挑みかかった。

 だが、イングランドは1点をリードしたことで、次第に勇敢さが失われていく。そこでの4バックから5バックへの変更は、むしろアルゼンチンの勢いに火をつける結果となってしまったのではないだろうか。

 特に右サイドに開いてチャンスメイクに徹するようになったメッシを、あれだけ自由にプレーさせてしまっては、次々にチャンスを作られても仕方がない。同点ゴールが生まれた時点で、事実上、勝負は決していたのかもしれない。

 引いて守りを固めることの怖さを思い知らされたこの試合を見ながら、思い出されたのは今大会のラウンド32、日本vsブラジルの試合である。

 日本がブラジルの猛攻に耐え続けた末、後半アディショナルタイムに決勝点を奪われるという試合展開は、イングランドvsアルゼンチンとよく似ている。

 失点の可能性を最も低くする策は、ボールを自陣ゴールから遠いところに置いておくこと。だが、引いて守るということは、むしろ自陣ゴール前にボールが入ってくる機会を増やすことにつながり、"事故"も含めて失点の可能性は高まる。

 だからこそ、守りを固めての逃げきり策は、厄介なのだ。手っ取り早い勝利の方程式に見えて、実は相手の猛攻に歯止めが利かなくなる危険性もあり、ひとたび同点に追いつかれれば、次に打つ手がなくなってしまう。

 アルゼンチン戦の逆転負けで明らかなように、ベタ引きで守りきる戦い方は、屈強なDFを数多く擁するイングランドでさえ難しいのが現実だ。

 今さらながら、日本は理にかなわない策を選択し、相応の報いを受けた。

 その事実を、図らずもイングランドが身をもって教えてくれている。

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