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【ワールドカップ】スペインは今日も粛々とパスをつなぐ 自分たちが信じる「勝つ確率の高いスタイル」 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Kenji Nishibe

【ポジションとポゼッション】

 スペインが大躍進を遂げた時期、そのスタイルは「ポゼッションサッカー」と呼ばれた。中枢を担ったのはバルセロナの選手たちだ。

「我々のやり方でボールを70%支配できれば、80%の試合には勝つことができる」

 これがクライフ監督の植えつけた教義だ。ボール保持が前提で、実際バルセロナ、スペイン代表は圧倒的な保持力で無双状態だったので、「ポゼッション」が注目されたわけだ。

 ここで注意すべきなのは「我々のやり方で」と言っているところだと思う。そこにはボールを失った直後のプレッシングが含まれているのだが、それ以上にこのサッカーはポゼッションとポジションが両輪で、ポゼッションだけではないのだ。

 クライフの右腕だったカルロス・レシャックはJリーグの横浜フリューゲルスの監督を務めたことがある。初練習で「パスを回せ」と指示したら、選手が動き回るばかりでボールは思うように回らなかった。するとレシャック監督は練習を中断し、一人ひとりに正しいポジショニングを教え込んでいったという。

 ボールを保持するには、それにふさわしい作法がある。技術、ポジショニング、タイミングなのだが、その柱になるポジショニングについての知識が当時の日本の選手たちにはなかったわけだ。

 今でこそバルセロナのサッカーはポジショナルプレーという形で普及しているが、前記したように当初はバルセロナ化を試みたクラブはことごとく失敗している。簡単に言えば保持力が多少上がっただけだった。多少では明確な効果は出ない。むしろボールを持たされて逆襲を食らうパターンに陥っていた。

 スペイン代表がそうならなかったのは、バルセロナの選手たちによるバルセロナのサッカーだったからだ。培ってきた年季が違う。

 決定的だったのはバルセロナの哲学が、ほぼそのままスペイン代表のそれになったことだろう。イタリアやドイツにできなかったことが、なぜスペインにはできたのか。

 それは、スペインにはイタリアやドイツのようなアイデンティティがなかったからだと思う。

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