検索

【欧州サッカー】ベンゲルが見つけた世界最高のボランチ ヴィエラこそアーセナル無敗優勝「真のMVP」 (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【ロイ・キーンとピッチでつかみ合い】

 両クラブともに4-4-2を用いていたため、両者は対峙するケースが頻発した。

 罵り合い、胸倉をつかみ、エルボーも日常茶飯事だ。口論からつかみ合いに発展し、世界屈指の審判グラハム・ポールが慌てて仲裁したこともあった。VARが管理する現在であれば、ヴィエラもキーンもカードはさらに増えていたに違いない。

「ちょっとやそっとのタックルでは止められなかった。カードをもらう覚悟で削りにいっても、簡単にかわされた。意識せざるをえない相手だった」

 のちにキーンが振り返ったように、マンチェスター・Uにとってヴィエラを軸とするアーセナルは、プレミアリーグ内では歯ごたえがある唯一のライバルだった。デビッド・ベッカム、ライアン・ギグス、ポール・スコールズなど、いわゆる「ファーギーズ・フレッジリングス(ファーガソンのひな鳥たち)」も、ヴィエラのプレー強度に煮え湯を飲まされている。

 だからこそアーセナルは、2001-02シーズンにプレミアリーグ(アウェー無敗)とFAカップのダブル優勝を達成し、ヴィエラはワールドクラスの称号も手に入れた。ティエリ・アンリとともに2001-02シーズン終盤から2002シーズン序盤にかけて30戦無敗という大記録の中心にも居座っていた。

 そして、2003-04シーズンがやって来る。

「我々がシーズンを通して無敗を維持したとしても、驚くべき事象ではない」

 常日頃から傲慢なほどの自信を口にするベンゲルを、メディアはいぶかっていた。ファーガソンからは「その発言に責任を持てるのか」と至極真っ当に批判された。

 ところがアーセナルは、無敗優勝をやってのけたのである。

 偉業の立役者は30ゴールを挙げたアンリかもしれない。記者投票、選手間、プレミアリーグ選出のトリプルMVPに輝いている。

 ただ、俊敏かつ的確なポジショニングでピンチの芽を未然に摘み取り、全方位を見渡す状況判断でゲームプランを愚直なまでに実行し、時に激しく、時に冷徹なまでの態度で勝利に尽くしたヴィエラこそが「真のMVP」との指摘は、22年が過ぎた今も決して少なくない。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る