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【FIFAワールドカップ】ジャイアントキリングで鳴らすアイルランドにまた英雄が誕生 トロイ・パロットが2試合5得点の大活躍 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【代表チームが戦う理由とは?】

 アイルランド人は彼らの物語を紡ぐ。

 選手たちは誇り高く戦い、決して諦めない。諦める理由がないのだ。

 諦めないがゆえの劇的な終了間際の得点ということではドイツがよく知られているが、アイルランドとは趣を異にしている。ドイツは決して諦めず、最後の最後まで可能性に賭ける。空中戦の強さは技術的なポイントだが、それ以上にやるべきことをやり通す合理性が際立っている。勝つために最後の1秒まで手を抜かず、やるべきことをやり続ける。

 アイルランドも、もちろん勝つために頑張っているわけだが、それ以上に決して諦めない姿を見せることが重要なのだと思う。アイルランドの誇りと魂を示す。それこそが勝利以上にプレーする目的なので、絶望的な状況に追い込まれるほど奮い立つ。むしろその瞬間こそが見せ場なのだから。

 こうして、時に英雄が生まれる。英雄たちはクー・フーリンのように語り継がれる。それがたとえ一夜限りの英雄だったとしても関係ない。永遠に彼らの物語の英雄であり、神話のように生き続け、語り継がれていく。

 すべてを手にしたからではなく、勝ち目のない戦いに挑み続けるから英雄なのだ。4年に一度のW杯で最終的に勝者となるのは1チームだけ。他のすべてはどこかで必ず敗北する。だから、サッカーの代表チームは勝つこと以外にプレーする理由を持っていなければならない。アイルランドはいつもそれが明確で、サッカーとは本来こういうものではないかと思わされるのだ。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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