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来年のワールドカップをスペインがボイコット? イスラエル問題で極度に緊張感高まる欧州予選 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【UEFAの決定を待つノルウェー】

 もしFIFAがUEFAに従ってイスラエルを排除すれば、アメリカは必ず猛反発するだろう。そうなると、場合によってはワールドカップの開催そのものが危うくなる。理論上、FIFAはアメリカの開催試合を共同開催国であるメキシコやカナダに移すこともできる。3カ共同開催と言いながらも、試合のほとんどをアメリカに持っていかれたことに両国は不満を抱いていたのは確かだ。だが、今から仕切り直すのは現実的にはほぼ不可能だろう。

 逆にFIFAがイスラエルを処罰せず、UEFAだけが排除すると決めた場合は、今度は欧州諸国が反発し、事態はいっそう複雑化する。スペインはすでに「ワールドカップをボイコットする可能性がある」としており、ノルウェー、ベルギー、ポルトガル、アイルランドも同様の立場を取っている。

 そしてここにもうひとつの思惑が見え隠れする。UEFAとFIFA。このふたつの組織は常に対立の構図にある。FIFAは世界のサッカーのすべてを支配したいが、UEFAは自分たちヨーロッパがサッカーの中心であるという自負がある。最近FIFAが推し進めてきた各大会の巨大化に、UEFAは選手の疲弊などを理由にことごとく反対していたが、いつもFIFAに押しきられてきた。

 だが、ワールドカップにヨーロッパのチームが参加しなければ、大会は成り立たない。今回の問題で、FIFAはUEFAの偉大さを否応なく感じることになった。これはUEFAにとって、一矢報いる大きなチャンスでもある。

 ワールドカップ自体が中止になる可能性は現時点ではほぼないと思われるが、ゼロではない。大会をめぐる緊張はここ数カ月で誰も想像できなかったほど高まっている。イスラエルを排除するにせよ、しないにせよ、嵐のような結果を招くことになるかもしれない。

 10月11日のイスラエル戦をノルウェーはどのように迎えるのか。まずはUEFAの執行委員会の決定待ちだろう。ノルウェーサッカー協会の会長はUEFAの理事でもある。UEFAの決定なしに試合をボイコットすれば、単にイスラエルの不戦勝ということになってしまう。

 そしてもし試合をする場合は、オスロでの収益はすべてガザで活動する「国境なき医師団」に寄付されるという。

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