来年のワールドカップをスペインがボイコット? イスラエル問題で極度に緊張感高まる欧州予選 (2ページ目)
【イスラエルがなぜUEFAなのか】
一方で、イスラエルを擁護する国々もある。ドイツは100%親イスラエルというわけではないが、歴史的にイスラエルと緊密な関係を持つ。南米の国々もそうで、そして何よりアメリカだ。
アメリカは国務省を通じて「イスラエルをワールドカップから排除することは絶対に許さない」と表明した。トランプも「2026年大会を政治決定で汚すことは許さない」と公言している。アメリカは来年のワールドカップの主要開催国だ。だからこそ、ここ数日行なわれているピッチの外の「試合」は一層デリケートなものになっている。
ここで少し、イスラエルのサッカーの歴史をおさらいしておこう。イスラエルはさまざまな大陸でワールドカップ予選を戦ってきた。
イスラエルは地理的にはアジアに入る。しかしアラブ諸国などが「イスラエルとは対戦しない」「対戦するくらいならFIFAを脱退する」と主張し、実際、試合をボイコットすることもあった。このためイスラエルは大会ごとにヨーロッパ予選やアジア・アフリカ予選、オセアニア予選などに組み入れられ、最終的にはヨーロッパに回されることで落ち着いた。1991年以降は、クラブも代表チームもUEFAの枠で戦ってきた。
UEFAに入れたのにはFIFAのこんな政治的思惑もあった。ヨーロッパは強豪ぞろいで、ここに入れておけばイスラエルはまず世界の舞台まで勝ち進めない。敵対する国と対戦する危険が減るというわけだ(ただし、最近ではイスラエルサッカーが強くなり問題が起きている。2022年のU‐19欧州選手権で準優勝し、翌年のU‐20ワールドカップに勝ち進んだが、開催国だったインドネシアが拒否。アルゼンチンで代替開催された)。ヨーロッパで戦うことは、イスラエルが生き残るための唯一の手段だった。だが現在、そのUEFAからも追い出されようとしている。
すでに現在のイスラエルは自国で公式戦を行なう権利を失っている。この2年間、代表はハンガリーでホームの試合を行ない、クラブはセルビアやギリシャのスタジアムを借りて欧州のカップ戦を戦ってきた。ヨーロッパリーグに出場している唯一のイスラエルのクラブ、マッカビ・テルアビブも代表と同様、テルアビブから遠く離れた場所でホームゲームをしている。これは明文化された処罰ではないが、現実としてすでに行なわれているペナルティだろう。
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