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来年のワールドカップをスペインがボイコット? イスラエル問題で極度に緊張感高まる欧州予選 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【UEFA対FIFAに発展も?】

 そして現在は「完全排除」が議論されている。これが可決されればイスラエルは、ロシア同様、世界のスポーツから孤立することになる。

 ロシアは現在、FIFAとUEFAのどちらからも排除されている。2022年2月のウクライナ侵攻の直後、速やかに決定された。その理由は明確だ。ロシアが他国を侵略したからだ。

 今回、イスラエルを擁護する側は「ロシアとは状況が違う」と主張する。「イスラエルは自ら好んで戦争を始めたわけではない。テロリストに攻撃をされたからだ」と言うのだ。2023年10月7日、イスラエルはハマスによって残虐な攻撃を受け、251人が拉致され、今もなお48人のイスラエル人が監禁されている。だから「ロシアとイスラエルを単純に比較できない」と、彼らは言う。

 一方で、イスラエルに処罰を求める側は「ルールは同じでなければならない」と主張する。イスラエルは現にガザに攻撃を行なっている。ロシアが罰せられたなら、イスラエルも罰せられるべきだ。そうでなければサッカー界の信用は失墜すると、彼らは言う。

 もしUEFAがイスラエルを排除する決定を下せば、FIFAは大きな選択を迫られることになる。UEFAの決定に対し、FIFAが沈黙を守ることはできない。FIFA本部のあるチューリッヒでも緊急の臨時理事会が必要だという声がすでに上がっている。公式日程はまだ決まっていないが、近いうちに招集がかかるだろう。

 そこでもしFIFAがヨーロッパの決定に従わなければ、前例のないUEFA対FIFAの「世界的な衝突」に発展する可能性がある。サッカー界で最も強力なふたつの組織が、ひとつの加盟国をめぐって正反対の判断を下す事態となるかもしれない。

 ワールドカップ主要開催国アメリカはFIFA内で1票しか持たない。しかし、政治的な影響力は他のどの国よりも大きい。特に2026年ワールドカップ開幕まで200日余りの時点では。

 もちろんFIFAは何が何でもこの史上最大のワールドカップを決行したい。そのためにFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長はずっとアメリカとトランプにすり寄ってきたのだ。そしてトランプはすでに「イスラエルへの処罰はない。以上だ」と明言している。

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