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【欧州サッカー】最高峰守護神ドンナルンマの移籍事情 トップクラブはGKに何を求めるのか (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【撤退戦で頼りになるドンナルンマ】

 プレミアリーグ第5節のアーセナル戦、シティは保持率32%というグアルディオラ監督下では異例の数字を記録した。

 9分にアーリング・ハーランドが先制した後、シティはホームのアーセナルに押され始め、70分以降はローブロックで守備を固めた。これもグアルディオラ監督下では異例。ロスタイムに失点して1-1のドローとなっている。

 グアルディオラ監督のチームは、およそどんな試合でもボール保持率で圧倒してきた。しかし、近年はその優位性が減退している。その原因はグアルディオラのプレースタイルをコピーできたチームが現れたからだ。保持とハイプレスで相手を圧倒する戦術は、模倣者たちが失敗の山を築いた後、アーセナル、PSG、バイエルンなどが「ペップ方式」を消化して台頭してきた。

 アーセナルのハイプレスをシティがどれだけかわせるか、逆にアーセナルのビルドアップをシティが封じ込められるか。保持とプレスの両面でシティはアーセナルを圧倒できる見込みがなくなった。かつてバルサ時代の教義だった「70%の保持なら80%勝てる」が成立困難になったわけだ。

 プレミアリーグはアーセナルのほかにもリバプール、チェルシーがいて、その他のチームも保持はともかくプレスの強度は高く、必勝ラインの保持70%を維持するのが難しくなっている。

 おそらくグアルディオラ監督はこうした現状から、アーセナル戦後半のような撤退戦も想定しているのだろう。撤退戦においてGKに要求されるのは守備力だ。アーセナル戦でのドンナルンマはチームを救うセーブを連発した。ビルドアップは無理をせず、ロングボールをハーランドへ蹴る。GKからトップへのロングボールは、ハイプレスを仕掛ける相手に対しての模範解答のひとつだ。

 ルイス・エンリケとグアルディオラの志向するサッカーは同じだが、置かれているリーグの状況が違う。リーグアンで突出した一強であるPSGはビルドアップできるGKを重視し、熾烈な優勝争いのなかで幅広い戦い方が要求されるプレミアでシティは守備力の高いGKを求めたわけだ。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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