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【欧州サッカー】最高峰守護神ドンナルンマの移籍事情 トップクラブはGKに何を求めるのか (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【足下の技術が突出していたエデルソン】

 ドンナルンマを獲得したシティのプレースタイルはPSGとほぼ同じと言っていい。

 圧倒的なボール保持とハイプレスの循環でゲームを支配するプレースタイルは、2008年にジョゼップ・グアルディオラ監督がバルセロナで始めたものだ。グアルディオラは「自分はラファエロの弟子」と言っていて、その戦術の原画を描いたのはヨハン・クライフ監督だとしているが、クライフの構想を実現したのはグアルディオラ監督の時代だ。

 バルセロナのサッカーは戦術史の大きな転換点となった。ただ、バルサを模倣したチームはいずれも惨憺たる結果に終わっている。リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケツがいてこそのプレースタイルだったわけだが、ビルドアップに関与できるGKの存在も当時としては珍しかった。

 その後、バイエルンを経てシティの監督になったグアルディオラはいずれもバルサ方式の移植に成功している。バルサをコピーしようとした模倣者ではなく、オリジナルを創り上げたパイオニアなので、何が必要なのかを完璧に理解していたからだろう。シティではイングランド代表GKジョー・ハートを放出してクラウディオ・ブラーボをバルセロナから獲得した。ブラーボは総合力ではハートに劣るが、足下の技術では上回っていた。さらにエデルソンを獲得してプレミアを制している。

 エデルソンは足下の技術が突出しているGKだ。シティのビルドアップを向上させ、正確なロングキックでたびたび決定機を演出して、グアルディオラのチームに不可欠な存在となっていった。そのエデルソンを放出してドンナルンマは理屈に合わないように思えるのだが、そこにはそれなりの事情がある。

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