ストライカーの常識を大きく変えるウスマン・デンベレ エムバペスタイルはもう古い (3ページ目)
【自由人かつ規律の人】
デンベレの変化は攻撃面でも顕著だ。2024年までの定位置は右ウイングだったが、2025年からはセンターフォワードに変わっている。そして偽9番として新境地を拓いた。
味方がビルドアップを開始した時のデンベレは、たいていオフサイドポジションにいる。そこから下りてきてクサビのパスを受けてフィニッシュへの流れを作るプレーが得意だが、そのまま相手DFの背後に居続けることも多い。
DFの背後にいるデンベレが狙っているのは、DFの手前のスペースだ。
PSGがボールを運んで仕掛けていく状況になると、相手DFはそれに合わせて後退する。そのタイミングでデンベレは下がるDFと入れ替わるようにDFの手前に移動する。動きの方向が違うので、タイミングよくパスが来ればDFと距離をとることができる。デンベレの技術からすればワンタッチで前を向くのは難しくない。
ゴール前30~40メートルで前を向けば、デンベレは何でもできる。ドリブルで仕掛けてシュートへ持っていけるし、味方にラストパスを送るのもうまい。
サイドへ流れた時も、デンベレがいるのはオフサイドぎりぎりの場所だ。中央にいる時のように明らかなオフサイドポジションではないが、DFラインと並ぶところに立っている。ここから裏を狙う、あるいは引いて右サイドバックのアクラフ・ハキミと連係する。
右ウイングだった時のデンベレも、ずっと右に開いてはおらず、中へ入っていくことがほとんどだった。右サイドの幅をとるのはハキミの役割で、PSGは押し込んだ場合には前線に6人を配していた。3トップと2人のインサイドハーフ+ハキミの6人なので、5レーンの原則からするとひとりが余剰になる。そのひとりがデンベレで、自由に浮遊しながらチャンスを創出していた。すでにこの頃から偽9番的なプレースタイルだったわけだ。
いわば偽7番だったデンベレが偽9番に定着したのは、フビチャ・クバラツヘリアの加入とドゥエの台頭が大きい。前線に人が揃ったことでハキミが常時右へ進出する必要がなくなり、デンベレはひとつ手間を省略して最初から中央で自由人として振る舞うようになった。
偽9番のデンベレはより自由になり、同時に献身的な守備でプレスのスイッチを入れる規律の人にもなった。以前よりデンベレらしさが発揮され、同時にかつてのデンベレとは思えない攻守のリーダーに変貌している。もともとスーパーな能力を持っていた選手が、さらに大きく変貌。ここまで覚醒した例もないのではないか。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
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