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レアル・マドリードが陥ったアンバランス 「ファンタスティック4」の構造的問題 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【3連覇を達成した「BBC」との違い】

 ファーストレグでライスの2本のFK弾が決まっていなかったら、結果はどうなっていたか定かではないが、仮に今回勝利していても、準決勝、決勝と進むなかで、問題は露呈したと思われる。CLで連覇を達成するチームのサッカーではなかった。

 レアル・マドリードの前の4人は「ファンタスティック4」と呼ばれているようだが、その手の異名で想起するのは「BBC」だ。ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド。2015-16シーズンから始まったCL3連覇を語る時、この3人の名前は外せない。

 この3人は「ファンタスティック4」とは異なり、きれいに並んでいた。ロナウドとベイルは推進力を活かすタイプで、ベンゼマは真ん中でボールを収めるタイプ。さらにベンゼマは、最大のスター、ロナウドが内に入れば左に開くポジションワークを見せ、バランスを見事に保った。また、中盤はクロース、モドリッチ、カゼミーロがコントロール。「ファンタスティック4」のように頭(前方)の重たいサッカーに陥ることはなかった。

 3連覇を飾ったかつてのチームと比較すると、今回のチームの問題点は鮮明になる。サッカーはバランスのスポーツ。アーセナルからもこの点について学ぶことがあった。

 アーセナルもCFは不在だった。左右にガブリエル・マルティネッリとブカヨ・サカの両ウイングを従え1トップを張ったのはミケル・メリーノだった。典型的なCFではまったくない、本来は中盤の選手だ。それでも適性がサイドではなく真ん中である彼を、ミケル・アルテタ監督は0トップ的な1トップに据えた。レアル・マドリードで言えばベリンガムをトップに据えるようなものだ。これで左右のバランスは保たれた。

 だからと言って、レアル・マドリードの場合、ベリンガムを1トップに据えることは難しそうだ。ロドリゴを先発から外し、左にヴィニシウス、右にエムバペに配す3トップは築きにくい。エムバペの適性は左。ヴィニシウスも左。両者ともに右ウイングはできない。

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