レアル・マドリードが陥ったアンバランス 「ファンタスティック4」の構造的問題 (2ページ目)
【行き止まりの道を無理に進むような攻撃】
決勝トーナメント1回戦のアトレティコ・マドリード戦も、いま振り返れば怪しい兆候が見え隠れしていたが、なんとか競り勝ち、迎えた準々決勝アーセナル戦だった。
蓋を開けてみると力関係はほぼ互角。ファーストレグではアーセナルがホームの利を活かし、試合をやや優位に展開した。レアル・マドリードは焦った。4人のなかで最も頼りになるヴィニシウスにボールを集めるも、デキはイマイチで、攻撃に拠りどころがなくなった。アタッカー陣4人の関係はバラバラになっていた。
トップにボールが収まらないサッカー。ひと言で言えばそうなる。
エムバペが中央寄りに構えても、基本的にはドリブラーだ。自慢のスピードを活かした推進力が、同じくドリブラーである左右のウイング(ヴィニシウス、ロドリゴ)と重なった。3人が3人とも槍タイプなので、真ん中でボールを受ける選手がいなかった。バルサで言うところのロベルト・レバンドフキがいなかった。
アーセナルとの第1戦は、そうこうしているうちにデクラン・ライスにFKを2点決められる。まさかのゴールにレアル・マドリードはさらに慌てた。その結果、エムバペは左に寄る。左右のバランスはいっそう崩れた。最後はミケル・メリーノにも一発を浴び、0-3でセカンドレグに臨むことになった。
そのセカンドレグ、初戦との違いはヴィニシウスが好調だったことだ。しかし、それだけに左右のバランスはいっそう乱れた。エムバペが左に加勢すると、攻撃は8割がた、左に偏った。攻撃のルートは相手にミエミエだ。行き止まりの道をゴリゴリと無理に進もうとしている感じになる。
前の4人を後方から操る交通整理役も不在だった。トニ・クロースは引退し、ルカ・モドリッチに全盛期ほどの存在感はない。舵取り役がいないので、展開がコントロールされていない。バルサと比較すればレバンドフスキに加え、フレンキー・デ・ヨング、ペドリ、ガビがいないことになる。中盤不在。攻撃はスター選手の個人技まかせ。前の4人が操縦不能の暴れるようなサッカーになっていた。ご承知のようにセカンドレグの結果は1-2。合計スコア1-5の完敗だった。
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