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サッカー日本代表の参考になるフェイエノールト 「サイドがゴールに迫る」サッカーとは

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 チャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントが始まる。そのなかで昨今は、サイドで存在感を放つ選手が試合を動かす傾向がある。

 ロベルト・レヴァンドフスキ(バルセロナ)、アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、マルクス・テュラム(インテル)など、ストライカーがハンマーのように守備を打ち破るのは強豪の王道だ。だが、FWが前線のプレーメイカーのようにポストや潰れ役などをこなし、サイドの選手にゴールを託す傾向も強まりつつあるのだ。

 欧州王者レアル・マドリードは生粋のストライカーではなく、キリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ、ジュード・ベリンガムがゴールを請け負う。リバプールも、モハメド・サラー、ルイス・ディアスのようなサイドアタッカーが攻撃を担い、アーセナルも、ブカヨ・サカ(現在はケガで戦線離脱)、ガブリエウ・マルティネッリがサイドから万力のように敵を押しつぶす。パリ・サンジェルマンもウスマン・デンベレ、クヴィチャ・クヴァラツヘリア、ブラッドリー・バルコラなどサイドアタッカー3人を揃えた陣容だ。

 思い返せば、カタールW杯の決勝で激突したアルゼンチンとフランスも攻撃をけん引していたのは、リオネル・メッシ、キリアン・エムバペだった。フリアン・アルバレス、オリビエ・ジルーというトップも健闘したが、助演的存在。貴重なアシストをした点では、サイドアタッカーのアンヘル・ディ・マリア、デンベレのほうが切り札的だった。

 このトレンドは、日本サッカーの道筋を定めるヒントになるかもしれない。

 日本は、サイドを崩し、ゴールに迫るサイドアタッカーを数多く輩出している。ブライトンで着実にゴールを重ねる三笘薫は、単騎でも相手を撹乱できる。凄まじいスプリントのなかでも、技術が落ちない。止まる動きを有効に使い、プレミアリーグの猛者を置き去りに。何よりゴールセンスに恵まれ、最後の最後で足を振れる。

 レアル・ソシエダの久保も、その典型と言える。チームはストライカー不在で得点力が低いという問題を抱える(オーリ・オスカルソンは力不足、ミケル・オヤルサバルはゼロトップ)、久保がゲームのテンポを作り、アシスト役になるだけでなく、貴重なゴールも決めている。入団以来、ゴールした試合は20勝1分けだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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