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サッカー日本代表の参考になるフェイエノールト 「サイドがゴールに迫る」サッカーとは (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【中央の上田綺世は「消耗戦」で貢献】

 伊東純也、中村敬斗(スタッド・ランス)、堂安律(フライブルク)といったサイドアタッカーも、所属先でストライカーに匹敵する得点を決めている。彼らはひとりでも状況を打開できるが、(俊敏性+技術)×コンビネーション=機動力で、局面の優位を全体に波及させられるアタッカーたちだ。

 ストライカーが圧倒的に点を取ることだけが、勝ち筋ではない。

 CLのラウンド・オブ16に向けたノックアウトフェーズでは、オランダのフェイエノールトが、イタリアの古豪ミランと対決し、ホームが1-0、アウェーが1-1、トータル2-1で勝利を収めている。

 フェイエノールトは現行のCLでは過去ベスト16に勝ち進んだことがなかったが、エースストライカーであるサンティアゴ・ヒメネスをシーズン中にミランに奪われたにもかかわらず、格上の相手を打ち負かした。

 第1戦のキーマンは上田綺世だった。

チャンピオンズリーグ決勝トーナメントに挑む上田綺世(フェイエノールト)Rex/AFLOチャンピオンズリーグ決勝トーナメントに挑む上田綺世(フェイエノールト)Rex/AFLOこの記事に関連する写真を見る「点取り屋としては疑問」などと、4-3-3のワントップで先発した上田へのメディアの評価は決して高くなかったが、ゴールだけが仕事ではない。

 そもそも上田は昨年10月末のハムストリングのケガで、3カ月近くも戦線を離脱し、試合復帰からは1カ月も経っていなかった。ひとりで相手を叩きのめすようなプレーは望めない。その後の試合は欠場したように、ミラン戦でも違和感があったはずだ。

 そのなかで、上田はチームプレーヤーとして貢献をしていた。前線で動き回って守備でふたをし、できる限りボールをキープし、呼び込む動きをやめなかった。いわゆる消耗戦だったが、一度でなく、二度、三度とボールを追い、背後から潰されかけても、味方にボールをつなぎ、パスが来なくてもポジションを取ってスペースを作った。心身ともに削られたはずだが、相手の力も削っていた。

 何より、両サイドに陣取ったアニス・ハジ・ムサ、イゴール・パイションというサイドアタッカーは、上田の恩恵で自由を得ていた。ふたりともトリッキーなドリブル、パス、シュートを駆使、変幻さを自在に出し、相手にリズムを読ませなかった。ミランのフランス代表テオ・エルナンデス、イングランド代表カイル・ウォーカーといったディフェンダーを手玉に取ったのだ。この試合ではパイションが決勝点を挙げていた。

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