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初瀬亮の海外挑戦で心の支えになったもの「兄貴には公立高校に行ってもらったし、家族にはいろんな我慢をしてもらった」 (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 それはチームメイトに対しても同じで、言葉がわからないからしゃべらない、理解できないのにやりすごす、ではなく、わからなくてもガシガシ相手に入っていくし、反応がなくても自分からみんなに声をかけています。小さいことやけど、朝の挨拶もまずは自分から。『おはよう』なら絶対に通じるんで(笑)。

 そんなふうにこの1カ月を過ごしてきたからか、加入が決まった時にチームメイトが『ようやくか!』みたいに喜んでくれたのはうれしかった」

 そして、気持ち。ヴィッセル時代のチームメイトにも、海外で戦い続けている同世代にも、口を揃えて一番大事だと言われたそれは、今後も長く海外で勝負することを目指せばこそ、不可欠だと言葉を続ける。

「移籍が決まってからも相談に乗ってもらっていた高徳くんやサコくん、ヨッチくんら先輩方にも報告の連絡をしたんですけど、みんな、最後は気持ちだと。『思っている以上に厳しい環境に直面するやろうし、理不尽なこともめちゃめちゃあるやろうけど、ほかにベクトルを向けるのではなく、すべては自分次第やと思って頑張れ』と。

 アカデミー時代から仲がいい律(堂安/SCフライブルク)にも、『最後は結局、気持ち。技術はみんなほぼ変わらないだけに、あとはどんだけ闘って、どんだけやれるか』だと言われました。ほんま、僕もそこだけやと思っています」

 背番号は28に決まった。実は、移籍に際して繰り返し相談に乗ってもらっていたヴィッセルの酒井高徳と同じ24をつけたかったらしいが、すでに他の選手がつけていたため、今シーズンは28を背に戦うことになる。

「家族やいろんな人に支えられて、実現できた海外移籍を、いつか人生を振り返った時に『行ってよかった』と思えるターニングポイントにするために、とにかく全力で、やり抜きます」

 自身のなかに息づく父の教えや、何度も自分を救ってくれた恩師の言葉を今一度、強くリマインドして、初瀬亮のイングランドでの新たなキャリアが始まった。「死に物狂いで頑張った」先にある未来に、どんな自分を見出せるのか。その挑戦に胸躍らせながら。

(おわり)

初瀬亮(はつせ・りょう)
1997年7月10日生まれ。大阪府出身。ガンバ大阪のアカデミーで育ち、2016年にトップチームに昇格。2019年にヴィッセル神戸に移籍。同年9月にアビスパ福岡へ育成型期限付き移籍をするも、2020年にはヴィッセルに復帰。2023シーズンにはレギュラーに定着し、同シーズンと2024シーズンのJ1連覇にも貢献した。2025年2月、イングランド2部のシェフィールド・ウェンズデイに完全移籍。念願の海外でさらなる飛躍が期待される。

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