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中井卓大にとって最後のチャンス 新天地・スペイン4部のリアルと一発大逆転の可能性 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【久保建英の同僚も4部出身】

 プロ1年目は、シーズン合計で5分間の出場に終わった。ケガではなく、力不足だった。フィジカル面の強度が足りず、プロの世界で技術を出せない。ライバルに差をつけられ、舞台にさえ立てなかった。

 そこで2023-24シーズン、中井は3部ラージョ・マハダオンダに期限付き移籍で武者修行へ。しかしチームは最下位で降格し、出場時間はたった581分だった。19試合出場だが、先発はわずか5試合で、フル出場はなし。ボランチ、トップ下、サイドアタッカーなどで起用されたが、ポジションが見つからなかった。ボランチでは守備が弱く、トップ下では強度の高いゾーンで負け、サイドではスピードが足りなかったのだ。

「とてもうまいし、エレガントだが、プロで戦う体ではない」

 チーム内から聞こえてきた話は、カスティージャ時代と符合していた。

 今シーズンはアモレビエタで挑戦することになった。昨シーズンまで2部で、スペイン最高のファンタジスタだったゲレーロ監督の存在もあり、「本領発揮か」と楽観的な観測もあったが、期待外れに終わった。チームは開幕から不振で、降格ゾーンへ。監督解任で、中井も見切りをつけられる形になった。

 つまり、現時点で中井は「3部でも通用しない」というレッテルが張られている。

 では、4部は行く価値がないリーグなのか?

 まず、スペイン、ラ・リーガは日本のJリーグと仕組みも厚みもまったく違う。1部、2部はほとんど同じチーム数だが、ラ・リーガの3部は20チーム×2で計40チーム、4部は18チーム×5で90チーム(ちなみに5部は18チーム×18になる)。各地域で多くのチームがしのぎを削り、その競争のなかから選手は這い上がって来る構図で、この裾野の広さこそ、ラ・リーガの強さの秘密だ。

 そしてチーム数の多さは、育成面の強さにつながっている。

 4部には、1部チームのBチームや、Cチーム、2部チームのBチームが所属している。たとえばエスパニョールB、アラベスB、レアル・ソシエダC、サラゴサBなどが所属している。レアル・ソシエダで久保建英とプレーするマルティン・スビメンディ、ベニャト・トゥリエンテス、ジョン・パチェコ、アンデル・オラサガスティも、4部で場数を踏んだ後、3部、2部で成熟しているのだ。

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