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久保建英、完敗のヘタフェ戦で孤軍奮闘 試合後のインタビューで発露した「怒り」の正体 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【スペイン人以上の勝負への厳しさ】

「RABIA」

 それはスペインで、「激怒、憤怒」という意味だが、一流選手になるひとつの条件と言われる。怒りのエネルギーを、プレーに変換できるか。

 アスリートの世界では、怒りはしばしば否定される。自制心、冷静さを失わせ、プレーレベルを下げることもあるからだろう。共闘するなかで、亀裂を生じさせることもある。しかし、コンタクトが基本にあるサッカーでは、しばしば怒りが感覚を研ぎ澄ませ、怒りを用いることができる者が最強を誇るところがあるのだ。

 怒りは、特にアタッカーにとっては個性と言える。リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドは、敵側から「決して怒らせるな」と、まるで目覚めたら火を吹く竜のように恐れられていた。実際、彼らは劣勢で暴言を受けたあと、あるいは不遜なファウルを受けたあとには「辱められた」と感じるようで、手がつけられなくなった。そこで、スイッチが入るのだ。

「スペイン人よりも、スペイン人らしい」

 現地でそう言われる気性の激しさこそ、久保の特徴と言えるだろう。バルセロナの下部組織ラ・マシア時代から、チームメイトが面食らうほどの気の強さだった。プレーや勝負に厳しく、誰よりも要求していた(日本人はそれくらい戦う姿勢を見せないと、まだまだ侮られてしまうという側面もある。また現地では最近、スタジアムでの人種差別も問題になっているが、それに屈する選手は生き残れない)。

 そして久保は、久保だけの基準を持っている。それに満たないことに関しては怒りを示すのだ。

 何度も書いてきたことだが、過去2シーズン、ラ・レアルは補強に失敗している。英雄ダビド・シルバの引退による混乱は情状酌量の余地はあるにせよ、アレクサンデル・セルロートの代わり獲得したストライカー候補が、ウマル・サディク(バレンシアへ移籍)からオスカールソンまで今のところは全滅。オヤルサバルがゼロトップで健闘しているが、限界はある。今シーズン、決定力の低さが致命傷になっているのは必然だろう。

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