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プレミアリーグ首位に貢献 遠藤航のライバル、フラーフェンベルフは「新しいリバプールの象徴」 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【ボールから目を切る能力】

 フラーフェンベルフが育ったアヤックスは「6番」の名手を生み出してきた。

 ヤン・ボウタース、フランク・ライカールト、トマーシュ・ガラーセク、フレンキー・デ・ヨングなどを輩出している。ちなみにオランダで中盤の底のポジション番号が6番なのは、後方右側から機械的に番号をつけていて、伝統の4-1-2-3システムでは2~5番がDF、その前に位置するアンカーが6番になるからだ。

 同じポジションがスペインで「4番」なのは、ヨハン・クライフ監督下のバルセロナでは3-4-3システムだったから。DFからMFに上げた選手が4番というわけだ。4番が上がったことで前方へ押し出された6番はトップ下の背番号になっていて、ホセ・マリア・バケーロが着けていた。ただ、このドリームチームで「クワトロ」のポジションを務めたジョゼップ・グアルディオラの背番号は3番だったのは、おそらくロナルド・クーマンが先に4番をつけていたためではないかと思われる。

 ともあれ、クライフ監督は戦術の話をする時には4番(オランダ式だと6番)から始めていたものだ。センターサークルの中にいるこの選手にボールを集め、配る。ボールを保持して攻撃するために不可欠な存在。

 ボールの中継点となる6番には特有の能力が必要だ。

 味方のDFからパスを受ける際、6番はほぼ止まっている。そして相手ゴールに背を向けている。守備側からプレスを仕掛けられやすい状態。ボールと背後の相手を同時に見るのは不可能なので、ボールから目を切る能力が問われる。

 FWやインサイドハーフも背後から寄せられるが、6番の場合は相手がより遠い場所から来ることが多い。相手との距離が遠い分、余裕があるように思えるけれども、それゆえの難しさがある。アタッカーはすでに相手からマークされていて比較的近距離に相手がいる。そのため、相手がどう出るかはある程度予測も立ちやすい。ところが、6番の場合は背後を確認した段階では、まだ相手がアクションを起こしていないケースもあるのだ。

 最初に見た時にはまだ誰も来ていないが、ボールが到達するまでの間に一気に寄せてくることがある。ボールから目を切って背後を見るタイミングが早すぎると、ボールが届いた時には状況が一変しているということが起こる。

 6番は最新の情報を得ている必要があり、できるだけボールが到着する寸前にボールから目を切る必要があるわけだ。理想はボールを見ずに背後を見ながらコントロールすることだが、それが無理でもぎりぎりまでボールを見ないでコントロールする能力が問われる点で、他のポジションとは少し違っている。

 さらに、背後から寄せきられても冷静に逆をついて外す、ボールを隠す、ワンタッチパスでタックルを回避するなどの技術が必須だ。フラーフェンベルフは長身で懐が深く、その特徴を活用してボールを守るテクニックに秀でている。ただ、その前にポジショニング、体の向きの的確さ、何よりボールから目を切る能力を持っている。

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