検索

エムバペはなぜフランス代表に招集されなかったのか 事情通が明かす本当の理由 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【PSGとレアル・マドリードの違い】

 いずれにせよ、ここまでの状況を見る限り、エムバペの移籍は成功とは言えない。彼が犯した一番のミスは、移籍する時期を見誤ったことだと、筆者は思っている。

 特にヴィニシウスの活躍により、CLで圧倒的な勝利を収め、彼が絶対的なチームの主役となった直後にレアルに来たのはタイミングが悪かった。現在、エムバペはセンターでプレーし、ヴィニシウスが、エムバペの好む左サイドで先発している。アンチェロッティはふたりのポジションを入れ替える気があるかと尋ねられると、率直にこう答えている。

「違いを生み出す選手を変えたくない」

 これは、レアルにおける序列を明確に物語るものだろう。

 さらに、ロドリゴやオーレリアン・チュアメニ、エンドリッキ、アルダ・ギュレルなど、若く優秀な選手や、将来のバロンドール候補ともなり得る選手たちもどんどん成長している。また、アンチェロッティが、今後もレアルのベンチに座り続けるかどうか(契約は2026年6月まであるが)、迷っている時にやって来たのもマイナス要因だったかもしれない。

 エムバペがレアル・マドリードで圧倒的なスターになりたかったのならば、その可能性のあった2年前に移籍すべきだったのだ。

 もしPSGに残っていたなら、今シーズンも彼は注目の的となっていただろう。好き勝手が許されただろうし、もし夢のCLのタイトルを獲得しようものなら、彼はチームの歴史に名を残す英雄、そして国民的スーパーヒーローになったはずだ。ジネディーヌ・ジダンと同じレベルに達したかどうかはわからないが、フランスサッカーの顔となったことは確かだ。

 だが、マドリードではエムバペはスポットライトを独占するわけにはいかない。たとえCLを勝ちとったとしても、レアル・マドリードにはそれを経験した選手は山ほどいるからだ。

 スペインでの逆境のなか、エムバペが彼に必要な「愛情」と「尊厳」を見出せるのは、キャプテンを務めるフランス代表チームのはずだった。しかしこの11月のネーションズリーグ戦にディディエ・デシャン監督はエムバペを招集しなかった。エムバペ自身はプレーしたがっていたが、デシャンが見送ったのだという。エムバペがフランス代表に選ばれないのは、これで2回連続になる。10月は体調不良のための欠場だったが、今回はケガではなかった。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る