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「自由人」ウスマン・デンベレの正しい活用法 ウイングから中央へ移動し自在にチャンスを創出 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【相手が捕まえられないプラスワンのアタッカー】

 ただ、ウイングとしてのラフィーニャは右サイドでプレーしていた。左へのスイッチは、ラミン・ヤマルの台頭で右ウイングが埋まっているという事情もあるが、もともと第二トップ下として使うつもりでの左なのだろう。設計図どおりの左ウイング。

 そうなると、よくわからないのがデンベレである。左右どちらもできるウイングではあるが、PSGでは右サイドが指定席だった。純然たる右ウイングのデンベレを移動させる意図はどこにあるのだろう。

 右ウイング、デンベレの「偽化」の理由としては、右SBのハキミがタッチライン際のプレーを得意としているからという説明に落ち着く。ただ、それだけでもなさそうだ。

 PSGはバルセロナと並んで、いわば先端戦術の詰め合わせみたいな状態になっている。

 バルセロナは4-2-3-1でスタートし、ラフィーニャの第二トップ下、バルデの左ウイング化とともに、伝統の「クワトロ(4番)」を残した。スペイン語でピボーテ、英語ならアンカーのポジション。PSGは4-3-3だが、ハキミのウイング化とデンベレの第二トップ下、そしてアンカーにヴィティーニャを起用する。

 ヴィティーニャはいわば古典的なプレーメーカーで、かつてのアンドレア・ピルロ(ミランやユベントスで活躍した元イタリア代表)のタイプ。中盤の底にいる司令塔だ。ジョアン・ネベスがこのポジションに起用されることもあるが、いずれにしてもビルドアップの軸になれる技巧派である。そしてウォーレン・ザイール=エメリ、ジョアン・ネベス、ファビアン・ルイスといった運動量と攻撃力を兼ね備えたインサイドハーフがアンカーの両脇を固める。

 サイドは左がブラッドリー・バルコラ、右にハキミ。中央には2人のインサイドハーフと、「偽9番」とまでは言わないが少し引き気味にポジションをとるセンターフォワードがいる。つまり、5レーンは全部埋めているわけだ。こうなるとデンベレはほぼ余剰人員と言っていいかもしれない。どこへ行っても味方とかぶる。

 これはバルセロナも同じで、中央3レーンの密集化とフリーマンの創出が新しい戦術だとすれば、バルセロナとPSGはその先端にいる。相手が守備で5レーンを埋めきっても、まだひとり、捉えどころのないアタッカーがいて、PSGの場合はそれがデンベレなのだ。

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