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ミランの圧倒的スピードスター、ラファエル・レオン 「理不尽系」モンスターはどのようにプレーするのがベストか (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【賢さとプレーの単純化】

 スピードに乗った時のレオンは無双。止まった状態でも防ぐのはかなり難しい。

 一歩の速さと大きさがモノを言っている。左サイドでDFと対峙、縦へ一歩持ち出して左足でクロス、と見せかけて切り返す。DFがこれに引っかからずに踏ん張り、体勢を立て直したとしても、寄せきる前にレオンは右足でクロスを入れてしまっている。リーチが長く、プレー幅が大きいので、単純に切り返しただけで右足を振る時間と空間を確保できてしまう。

 フィジカルコンタクトにも強い。短い距離の競走ならDFも体を当たることはできる。しかし、下手に当たっても巨体にはじかれてしまう。カカー、ベイル、あるいは「フェノメノ(怪物)」と呼ばれたブラジルのロナウド、さらにそのロナウドが若いころによく比較されていたジャイルジーニョ(ブラジル)もそうなのだが、理不尽系の多くは体が大きくてパワーがある。ユニフォームをつかんだくらいでは止められない。

 速いうえにうまくてサイズもあるのだから、さらに賢かったらどうにもならない。ただ、天は二物を与えずと言うように、理不尽なゆえにインテリジェンスに欠けるケースはわりとありがちではある。

 能力が圧倒的すぎるので、あまり考えなくてもいいからだろう。普通の選手とは立っている場所が違うので見える景色も違う。それを奇抜なアイデアに結びつけるのは得意だけれども、一般的な判断とか工夫は欠けていることがままある。

 10代のころのアンリは、左ウイングとして単純に走るだけで抜けた。しかし、さすがに相手も対策を立てるので、まもなく快進撃はいったん止まった。ここで同じ失敗を繰り返さなかったのがアンリの賢さで、スター街道をばく進していったのだが、ここで止まってしまったまま消えていった選手もたくさんいる。

 大成した理不尽選手は、皆それなりに賢い。レオンも賢さはある。ただ、プレーを単純化したほうが力を発揮できるタイプだと思う。レオンが現在のレオンになったのは左サイドに固定されてからだった。複雑なことを押しつけるのではなく、持って生まれた才能で突っ走らせるのがたぶん正解。

 ある意味、才能だけですべて許されるタイプ。理不尽なようだが、そういう選手もいるのだ。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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