久保建英を止められないのはなぜか アトレティコの「鉄壁の守備陣形」にも深刻ダメージ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【完全に止めたディフェンダーはひとりもいない】

 2分後にも、久保は決定機を作る。今度はガランをかわし、ギャラガーを外し、ニアにシュート。名手ヤン・オブラクにセービングされたが、これも際どい一撃だった。

 後半に入ると、久保はたて続けにラングレにファウルを受ける。その突破は、守備システムに深刻なダメージを与えていた。イエローカードが出されないのが不思議なほどだった。

 開幕以来、崩しのところで久保を完全に止めたディフェンダーは、ひとりもいない。

 昨年10月、ラ・レアル史上最高のサイドバックと言われるロペス・レカルテに「あなただったら、どう久保を止めるか?」と訊ねたことがあった。

「あれだけのタレントを止めるのは、正直、相当に苦労するだろう」

 レカルテはそう言って、考え込んでしまった。

「ボールを持たれてしまったら、そこでアドバンテージを取られてしまう。だから、一発目のプレーから勢いづかせてはいけない。かなりハードにコンタクトすべきだが、そこで駆け引きがあって。タケ(久保)も十分に予測し、罠を張っている。イエローをもらった時点で"詰んで"しまうんだ。(かつて対戦した)メッシもそうだったが、タケは左利きで左足がすごいけど、右足でも繊細なキックやコントロールができる。両足で蹴れるし、オプションが多いから、対応は大変だよ」

 レカルテはそう言って、肩をすくめた。それは今シーズン、多くの対戦相手たちの感想を代弁しているのだろう。

「ラ・レアルの攻撃陣のなかで、最もインスピレーションを感じさせる選手だった。アトレティコは、ファウルで対応するほかなかった」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』も、久保の仕掛けがチームに与える効果を称賛していた。終盤の同点弾はスチッチの高い技量によるものだが、その展開を生み出したのは久保とも言える。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る