サッカー日本代表入りにも期待したい大器 チェイス・アンリをシュツットガルトの名将も積極起用 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【自身の不甲斐なさも素直に吐露】

 チェイスは188cmという高身長もあって、世代別代表やクラブではセンターバックを務めることが多かった。だが、セバスティアン・ヘーネス監督は左右どちらかのサイドバックとして期待を寄せていることが、これまでの起用からわかる。

「もっと攻撃的に。(サイドバックでは)やっぱ守備だけじゃ意味がない。センターバックでやる分には普通にプレーすればいいですけど、サイドバックはセンターバックと全然違うんで。ポジショニングも変わってくるし、技術もけっこう出る。中に入って受ける時もあるので、そこもやんなきゃいけないなと思いました」

 とにかく、課題ばかりが口をついた。

 悔やまれるのは、試合のラストプレーだ。相手陣内でボールを受けた時にバックパスを選択。その時、チェイスは聞こえなかったらしいが、場内からはやや大き目のブーイングが聞こえた。ドイツではよくある光景だが、勝利を求めるファン・サポーターは消極的な判断に対して容赦ない。

「俺もシュートを打ちたかったです。でも、意外と相手がプレッシャーにきていて......。俺もベンチで見ていたら『打てよ』って感じたと思う。でも、ピッチに立つと全然違う。蹴ったら相手に当たりそうだったし。でも、そこも必要なのは経験かな」

 ピッチに立っているものとして胸を張りつつも、自身の不甲斐なさも複雑に入り混じる。

 一方で守備面においては、スピードを生かして相手のカウンターを食い止める場面も見られた。10日前のドルトムント戦(ブンデスリーガ第4節)で左サイドバックとして投入された時はマークの受け渡しがうまくいかず、失点につながるシーンもあって難しさを口にしていた。だが、この日の右サイドバックでは本人的にもだいぶスムーズにプレーできたようだ。

「ドルトムント戦は左サイドバックで、右利きのヤツ(チェイスは右利き)が左はけっこうむずい。その調整も必要で......それも言い訳になっちゃうけど難しかった。でも今日は右で、俺も好きなポジションなので」

 最終ラインながら途中出場を重ねるチェイスに、ヘーネス監督が期待を寄せていることは明らか。手応えも課題も感じつつ。大器の予感をびんびんに漂わせながら、20歳のチェイス・アンリは日々成長中だ。

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著者プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

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