バルセロナの守護神探し難航で日本人の名前も浮上...「狂わないとやっていけない」特殊性
10月1日、チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第2節、バルセロナは本拠地にスイスのヤングボーイズを迎え、5-0と完勝を収めている。終始、実力で圧倒した。ロベルト・レバンドフスキ、ラフィーニャの攻撃力は全開だった。
しかし、圧勝劇のなか、最後まで気が抜けない選手がいた。
バルサ下部組織ラ・マシア出身の(イグナシオ・)イニャキ・ペーニャは急遽、ゴールマウスを任されている。9月22日、ビジャレアル戦で正GKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンがシーズンを棒に振る右膝の大ケガで離脱。次のヘタフェ戦から先発出場して勝利に貢献したが、その次のオサスナ戦は4失点で敗北だった。ペーニャのミスではなかったが、GKに4失点は重くのしかかる。チームの連勝も7でストップだ。
「ペーニャでシーズンを戦えるのか?」
そんな不安はくすぶる。
ヤングボーイズ戦では好プレーを見せたバルセロナのGKイニャキ・ペーニャ photo by Nakashima Daisukeこの記事に関連する写真を見る すでにマーケットも閉じていることから、クラブはフリーのGKだけで補強をリストアップした。この緊急事態に、「日本人GK長田澪(ブレーメン)を補強か」という報道まであった(この期間の移籍は不可能)。
結果、昨シーズンまでユベントスでプレーし、現役引退後はスペイン国内のバカンス地にいたヴォイチェフ・シュチェスニーに白羽の矢を立てている。当初はケイロル・ナバスが最有力だったが、ユーベの正GKとしてプレーし、ポーランド代表としてユーロ2024も戦ったシュチェスニーに軍配が上がったようだ。
ヤングボーイズ戦を、シュチェスニーはスタンドで見守っている。すでにメディカルチェックも終了。週明け月曜日には契約発表の見込みと言われる。まだ34歳で、GKとしては脂がのりきっているだけに......。
「心配しなくていい。先発はお前だ」
ハンジ・フリック監督は、ペーニャへの過度の重圧を取り除こうと励ましたそうだが、口約束など無意味だろう。
「控えGKなら、行くつもりはない」
一方で、シュチェスニーがそう語っていたと、まことしやかに伝えられている。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。