エムバペ加入の「シン・レアル・マドリード」手綱を握るのは「新8番」バルベルデ (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【無尽蔵のスタミナとスピード。強烈無比のミドルシュート】

 バルベルデはウルグアイのペニャロールで育成され、17歳でレアル・マドリード行きが内定(翌年正式加入)。Bチームのカスティージャではボランチ、センターバックとして起用されたが、ペニャロールではトップ下だった。デポルティーボへの貸し出しを経て、レアル・マドリードのトップチームに合流した時にはマルチプレーヤーとなっていた。

 レアル・マドリードでの4シーズン目、アンチェロッティが監督に就任すると、バルベルデは右ウイングに起用される。すでに名脇役として目をつけられていた感がある。

 昨季はベリンガム・システムの中盤右を担当。無尽蔵のスタミナ、大きなストライドで駆け上がるスピード、正確なボールコントロールと戦術眼。そしてアンチェロッティ監督が「君の足には石がついている」と評した強烈無比のミドルシュート。バルベルデの能力は遺憾なく発揮されていた。

 昨季チャンピオンズリーグとラ・リーガの二冠を獲ったチームにエムバペが加入した今季、まだ最適解は探り当てられていない。

 いつもレアル・マドリードは1回弱くなる。

 エムバペ、ビニシウス、ロドリゴ、ベリンガムの後方にバルベルデとオーレリアン・チュアメニを配置した結果、ただバルベルデの仕事量が増大した。必死にパスをつなぎ、敵のカウンターアタックを全力疾走とタックルで止めるバルベルデがいなければ、最適解の前に崩壊が先だったかもしれない。

 さらに大きな問題はクロースの穴だ。攻撃力と献身性を兼ね備えた昨季のアタッカーたちも、クロースの交通整理なしには機能しなかっただろう。バルベルデはクロースに代わって手綱を握らなければならない。クロースとは違ったやり方で。

 ボールを完全に静止させるクロースのやり方とは、おそらく真逆になるかもしれない。バルベルデの資質はボックス・トゥ・ボックスであり、スティーブン・ジェラード(元リバプールほか)やポール・ポグバ(現ユベントス)がよく引き合いに出されるように、静的なクロースとは対照的な、動的なプレースタイルだからだ。

 想像の域を出ないが、バルベルデの8番は自ら動くことでカオスを加速し、それを自ら回収するという、前代未聞のスペクタクルになりそうな気がする。クロースのやり方を踏襲するのが無難かもしれないが、それではレアル・マドリードらしくないし、バルベルデらしくもない。

 壮大な自作自演で、世界最大級の火力に点火するクレイジーな8番に期待したい。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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