エムバペ加入でレアルはどうなる? 最強「新銀河系軍団」に内包するこれだけの不安材料 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【戦力的には最強チームだが...】

 プレーとは別のところでの懸念材料もある。エムバペは7月末、フランスリーグ2部のチーム、カーンの筆頭株主となった。夢は1部に昇格させることだという。レアルはエムバペがこのチームの運営に熱中して、自身のプレーがおろそかになることを心配している。これについてはアンチェロッティ監督やフロレンティーノ・ペレス会長がエムバペと話し合い、「君はプロとしてここに来たのだから、それは自覚してほしい」とクギを刺している。

 それにしても、引退間近ではなく、25歳という一番脂の乗った時期の世界トップクラスの選手が、他チームのオーナーになるなどという例は、これが初めてだろう。

 手持ちのカードだけから見れば、現在のレアル・マドリードは最強のチームだろう。そして歴代最高を目指すのだろう。だが―――簡単ではない。このチームにはエゴがいっぱいだ。ロドリゴはそれほどでもないかもしれないが、ヴィニシウス、ベリンガム、エムバペ、そして監督のアンチェロッティも非常に強いパーソナリティを持つ。

 シーズン開幕当初は問題ないかもしれない。新生ガラクティコス(銀河系軍団)としてともにプレーすることの大事さは、選手たちもわかっている。しかし、シーズンが進むにつれて不満が噴出し、彼らのエゴがぶつかり出す場面があるだろう。

 それに拍車をかけるのがプレッシャーだ。このチームは何が何でも勝たなくてはいけない。CLでもリーガでも絶対的な勝利を求められる。チームの上には「100%の勝利」という大きな岩が乗っているようなものだ。もし負けることがあれば、状況は変わり、犯人探しが始まるだろう。

 エムバペ個人にしてもそうだ。最初は「まだ慣れていないから」と言い訳ができるかもしれないが、それが通用する期間はそう長くはない。彼への期待が大きければ大きいほど、失望も大きくなる。これはパリでも見てきた風景だ。それでも彼が王様でいられたのは、それがPSGだったから。レアル・マドリードで、それはありえないだろう。

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