エムバペ加入でレアルはどうなる? 最強「新銀河系軍団」に内包するこれだけの不安材料 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【「彼がレアルに合わせなくてはならない」】

 エムバペについて、アンチェロッティ監督はほとんど話さない。しかし『フォーブス』誌のインタビューではこんなコメントをしている。

「レアル・マドリードは、ひとりやふたりの選手でできているわけではない。エムバペはほかのチームメイトと同様に、チームの状況を受け入れなければならない。彼がこれを理解し、監督の決定を尊重してくれることを願う。つまり、レアルが彼に合わせるのではなく、彼がレアルに合わせなくてはならないのだ」

 エムバペには、レアルから追い出されたら行く場所がない。アンチェロッティ監督の決定には従わなければならない。パリでのように、自分がチームの掟であるかのような振る舞いは、できないだろう。

 もうひとつ、アンチェロッティ監督が危惧しているのがエムバペのフィジカルコンデションだ。

 昨シーズンのエムバペは、パリ・サンジェルマン(PSG)との契約延長を拒否したことから、アジアツアーから外された。つまり、プレシーズンにできちんと準備ができていなかった。また昨シーズン中も多くの試合を欠場しているし、ベンチスタートも多かった。これは将来を見据えたPSGが、エムバペのいない状態に慣れるためでもあった。

 その結果、昨シーズンのエムバペの出場試合数は、18歳でPSGに来て以来、一番少なかった(それでも歴代最高の44ゴールを挙げたことは見事だが)。シーズン後のユーロ2024では鼻を骨折、彼自身のプレーにいいところはなかった。

 この夏のレアルのアメリカツアーにも、エムバペは帯同しなかった。エムバペの体調は完全ではない。チームに合流してからも、あまりハードな練習には参加しない日が続いている。チームは彼に再びケガをされるのが怖いのだろう。スーパーカップに出るとしたら、鼻を骨折して以来、初めてガードを外しての試合になる。

 こういう不安もあってか、いま、エムバペにはフィジカルトレーナーのアントニオ・ピントゥスがほぼつきっきりで指導している。ピントゥスはクリスティアーノ・ロナウドがマンチェスター・ユナイテッドからレアルに来た時のプロジェクトの責任者であり、ロナウドの肉体を、世界に誇るシックスパックに変えた人物だ。その彼がつくということは、レアルは我々が思っている以上にエムバペの体調を気にしている、という証拠でもある。レアルはなにがなんでもエムバペが最高の力を出せるようにしたいのだ。

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