ユーロ2024スペイン対フランスの勝負の分かれ目を林陵平が解説「スペインは中でも外でも攻撃をつくれていた」 (2ページ目)

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【中でも外でも攻撃をつくれるスペイン】

 スペインは今大会、基本的に4-3-3の初期配置から、アンカーのロドリが捕まえられた時にはインサイドハーフのファビアン・ルイスが下りてきて、ダニ・オルモまたはペドリが相手の2ライン間(DFとMF)をとる、4-2-3-1の形を使っていました。ただ、今回はフランスが自陣にブロックを作ったことで、CBのエメリク・ラポルトとナチョがフリーになるので、ファビアン・ルイスが下りてくる必要がなくなり、ダニ・オルモとともに2ライン間をとる位置が多かったです。

 フランスの中盤の3人の守備は、アンカーにオーレリアン・チュアメニ、前にエンゴロ・カンテとアドリアン・ラビオの逆三角形でしたが、スペインの攻撃時の3人も逆三角形になることが多かったので、噛み合わない状況が見られました。フランスがマンツーマン気味で捕まえようとするも、スペースが空いてしまうなど迷いが見られました。

 ただ、フランスは押し込まれた状況からボールを奪ったあとの個人の技術が高く、スペインのカウンタープレスを回避するシーンが見られました。そうしたなかで先制ゴールを奪いました。右サイドでデンベレが時間を作り、左のエムバペに届けてナバスとの1対1、そこからのクロスをコロ・ムアニがバックステップでフリーになり、ヘディングで流し込みました。

 先制はされましたが、スペインのやり方は変わりませんでした。今大会で非常に完成されているなと感じるのは、オルモとファビアン・ルイスの生かし方がうまくて、中を使ってから外に展開するシーンが多かったです。通常であれば、ウイングにニコ・ウィリアムズとヤマルがいるので、外から1対1で突破するというのが多くなるんですが、中でも外でも攻撃をつくることで、相手が読みにくくなっています。

 またニコとヤマルのポジションも外だけではなく、ハーフスペースに入ってSBのオーバーラップを使うなど、4-3-3におけるウイング、インサイドハーフ、SBの関係性が左右ともにすばらしいです。

 この試合では、フランスの1トップのコロ・ムアニの守備に対し、ラポルトとナチョの2CBのどちらかがフリーになって、ドリブルで持ち運べるのも大きかったです。フランスはこれを嫌がってカンテが前線に捕まえに出ると、今度はロドリやファビアン・ルイスにボールが渡る。これでボールの出し手を抑えにいくか、受け手を抑えにいくかでフランスには迷いが生じていました。

 スペインのヤマルの同点ゴールは、ナチョからオルモに縦パスが入り、押し込んだところから生まれたものでした。逆転ゴールも先述したサイドの関係。右から上がったナバスのクロスから生まれました。オルモのゴール時のボールタッチは、ちょっと異次元でしたね。

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