ユーロ2024スペイン対フランスの勝負の分かれ目を林陵平が解説「スペインは中でも外でも攻撃をつくれていた」 (3ページ目)

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【フランスは大会を通じてパッションに欠ける戦い】

 対してフランスのほうは、スペインとは違って外のデンベレ、エムバペを使っての展開だけになってしまいました。スペインのように中盤の3人をうまく使って、中を見せておいてから外、となると、もっと外のふたりが生かされるんですが。

 チームとして中からどうやって前進するか、中を使ってどう相手を攻略するかが見えなかった。これは大会を通してずっと見えなかったので、得点も少なかったのだと思います。

 スペインがリードして、今度はフランスがボールを持って押し込む時間が出てきましたが、アンカーのチュアメニがDFラインに下りてくることが多かったんです。状況に応じて下りるのは全然問題ないと思うんですが、チュアメニが下りることで中盤ではラビオも下りてきて、全体的に後ろに重いポジション取りになり、1トップのコロ・ムアニが孤立することにつながりました。

 後半、フランスはラビオがボールを触り始め、中を使えるようになり、外からのクロスが多くなりましたが、なかなか決定機にはつながりませんでした。62分にカンテ→グリーズマン、ラビオ→エドゥアルド・カマビンガ、コロ・ムアニ→ブラッドリー・バルコラと3枚替えで動き、エムバペを真ん中にしました。

 個人的にはボールを触り出していたのでラビオを残してほしかったですし、クロスが上がっていたので、この時点でオリビエ・ジルーを入れたほうが相手は怖かったのではないかなと思いました。

 ジルーはその後79分にデンベレと代わって入ってきました。エムバペとふたりで前線を組み、グリーズマンが右サイドの方へいく形になりましたが、グリーズマンはサイド突破からクロスを上げるタイプではないと思います。このあたりの選手交代の使い方や時間など、狙いがよくわからなかった部分がありました。

 フランスはどういうわけか今大会はテンションが上がらず、パッションや迫力に欠けるところがありました。戦術や個人の技術よりも大事なもの。選手から見えるオーラや勝ちたいという思いが見られなかった感じがします。

 スペインはリードしたあともゲームをコントロールしながら、うまく戦っていました。攻撃だけでなく守備、攻守の切り替えの部分など、攻守4局面での完成度の高さが見られました。

プロフィール

  • 林 陵平

    林 陵平 (はやし・りょうへい)

    1986年9月8日生まれ。東京都八王子市出身。ジュニアからユースまで、東京ヴェルディの育成組織でプレーし、明治大学を経て2009年に東京ヴェルディ入り。レフティの大型FWとして活躍した。10年に柏レイソルに移籍し、11年にJ1優勝を経験。その後、モンテディオ山形、水戸ホーリーホック、再び東京Ⅴ、FC町田ゼルビア、ザスパクサツ群馬でプレーし、20年に現役を引退。Jリーグ通算300試合出場67得点。現役時代から海外サッカー通として知られ、メディア出演多数。現在はプレミアリーグからJリーグまで幅広く解説を務め、トップランナーとして活躍中。

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