浦和レッズSB・荻原拓也のクロアチア奮闘記「足はボロボロ。ピッチはデコボコ。シャワーも浴びられない」
森保監督に推薦したい左SBスペシャリスト
荻原拓也(ディナモ・ザグレブ)インタビュー前編
たかが半年、されど半年──。たくましい表情と生きた言葉には、確かな成長があった。
今年1月、浦和レッズからディナモ・ザグレブに期限付き移籍した荻原拓也が、クロアチアで過ごした半年間を振り返る。
「海外では、何事にも自分の感度が高く、同じ1日でも、同じ1試合でも、全然違った経験というか、とらえ方ができました。だから、半年間でも濃かったというか。ハプニングも含めて、いろいろなことが起きましたから」
荻原拓也がクロアチアのサッカーで学んだものとは? photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る ディナモ・ザグレブからのオファーを知ったのは、FIFAクラブワールドカップ2023を戦ったサウジアラビアから日本に飛行機が降り立った時だった。
着陸のアナウンスが流れ、スマートフォンの電源を入れると、1通のメッセージに目が留まる。代理人からだった。
「ディナモ・ザグレブからレターが届いたぞ」
長いシーズンを戦い終え、身体は疲弊していたが、胸が昂(たか)ぶるのがわかった。近くにいたチームメイトに伝えると、全員が祝福してくれた。
「みんなが『チャレンジしろ』って言ってくれました。特に(アレクサンダー・)ショルツ、アレックス(・シャルク)のふたりは、自分のことのように興奮してくれて。『いいオファーが来たな』って喜んでくれました」
惜しみないアドバイスをくれる岩尾憲は「思いきり楽しんでこい」と言い、「成長して、また会えるのを楽しみにしている」と送り出してくれた。
興梠慎三からは「オギ(荻原)の1年間のパフォーマンスはすごかったから、安心して送り出せる」とメッセージを受け取り、酒井宏樹は「オギの成長にはみんな驚いたし、これからどんどん伸びていくよ」と、背中を押してくれた。
成長を加速させてくれたマチェイ・スコルジャ監督(当時)をはじめ、出会ってきた指導者たちの言葉も力強かった。
2023シーズン、浦和レッズで公式戦53試合を戦った自信とともに、荻原が海を渡ったのは年が明けて間もなくのことだった。
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著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。