ユーロ2024ドイツ対スペイン 勝敗のカギは両軍の左右のバランスと大一番に臨む立ち位置 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【低迷期を脱した両国】

 ただ、スペインのサッカーはバランスに歪みを抱えていた。それは中盤過多。ウイングがいなかった。そこで優秀な中盤の選手をサイドに配置し、急場を凌いだ。その"中盤サッカー"の影響は、その後の低迷を招く原因になった。中盤王国と言われたジーコジャパン以降の日本と、状況は少し似ている。

 ドイツもユーロ2016(ベスト4)後、低迷。2018年、2022年W杯はいずれもグループリーグ落ち。ユーロ2020もベスト16で消えている。スペイン、ドイツ両国のそこまでの流れは似ている。2022年カタールW杯のグループリーグで、いずれも日本の後塵を拝す姿に、それは象徴された。

 視点をファン気質に変えると、これもかつては対照的な関係にあった。欧州で代表チームを応援する気質が最も高い国と言えばドイツとオランダが双璧で、イングランドがそれに続くという構図だった。逆に低い国はフランス、イタリア、スペインで、特に国としてのまとまりに欠けていたのがスペインだった。

 両国のファン気質を象徴したのは、2003年にマジョルカ島のソン・モイスで行なわれた親善試合だった。スペインは代表戦を行なっても、観客が入る場所は限られていた。そこで浮上したのがマジョルカ開催で、スペイン協会は、ドイツ人御用達のリゾート地であるこの地でドイツ戦を行なえばスタンドは埋まると踏んだ。実際、スタンドの3分の2はドイツ人で埋まった。スペイン国内で行なわれたスペインホームの試合なのに、ドイツファンで埋まるという光景は、まさに珍現象だが、それをスペイン側が意図的に行なったことに、その特殊性を見ることができた。

 そんなスペイン人気質に変化を感じたのはユーロ2008だ。スペインはロシアとの初戦をインスブルックで戦っているが、オーストリアのアルプス地方にまで多くのスペイン人が押し寄せる姿は異様に映った。「どうしたんだろう、今回のスペイン人は」と思っていたら、なんと優勝したのであった。「スペインが代表チームを応援する喜びを知った大会だ」とはスペイン人記者の言葉である。

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