ユーロ2004唯一全勝で評価上げるスペイン ヤマル&ニコ全開でジョージア戦も慢心なし (3ページ目)
【気がかりなのはセンターバック】
このふたりにボールを供給する中盤のトリオ、ロドリ(マンチェスター・シティ)、ペドリ(バルセロナ)、ファビアン・ルイス(パリ・サンジェルマン)は、それぞれ持ち味が違う。ロドリはマンチェスター・シティで証明しているように抜群のプレーメイクで、セルヒオ・ブスケツの穴を埋めた。ペドリはライン間で魔術師の本領を発揮し、ファビアン・ルイスはラインを突き破るようなドリブルや左足シュートが出色だ。
そしてトップも、アルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリード)がクロアチアン戦で神がかった動き出しでゴールを決めるなど、得点力を全開させつつある。バックアッパーにはゼロトップのミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)、横からのボールにめっぽう強いホセル(レアル・マドリード)を擁する。
両サイドバックはカルバハル、マルク・ククレジャ(チェルシー)が中盤の選手のようなセンスを持ち、ボールを運び、スペースを作る。アルバニア戦で先発したヘスス・ナバス(セビージャ)、アレハンドロ・グリマルド(レバークーゼン)もクロスなどで持ち味を出していた。
GKはウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)が守護神として定着した。2023-24シーズンのサモーラ賞(年間最優秀GK賞)を受賞。足元のプレーに難はあるが、ほかはコンプリートな能力の持ち主で、抜群の勘と反射神経でPKストップも得意とする。ダビド・ラヤ(アーセナル)、アレックス・レミロ(レアル・ソシエダ)はリベロ的性質を持ったGKで、使い分けができるほど贅沢なメンバーだ。
そんななかでアキレス腱はセンターバックか。エメリク・ラポルト(アル・ナスル)は左利きでフィードに定評があり、ナチョはレアル・マドリードの欧州制覇に貢献するが、ふたりとも筋肉系の違和感を抱えている。ロビン・ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)は激しく戦えるし、ダニエル・ビビアン(アスレティック・ビルバオ)もスピードに優れたファイターだが、盤石ではない。もともとチームの特色も攻撃的だけに......。
ジョージア戦のスペインはボールを持つ時間が長くなるだろう。昔はポゼッションに固執する傾向があり、こうした相手に苦戦していたが、今回は相手の守備陣形を破壊できるヤマル、ニコがいる。押し戻されても、ファビアン・ルイスやペドリは攻撃を組み直し、同時多発的にサイドバックもゴールに迫る。GKにシュートを防がれ、たとえ一発を食らっても、勝ちきれる陣容だろう。
ユーロ予選でスペインはジョージアと2度戦っている。1-7(アウェー),3-1(ホーム)と、いずれも勝利した。ただし、どちらも失点を喫している。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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